約 5,503,375 件
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/1558.html
魔道戦屍リリカル・グレイヴ Brother Of Numbers 第五話「地上本部襲撃(前編)」 「ふ~…さてどうしたものかな…」 男は溜息交じりの独り言を漏らしながら目の前のモニターを眺めていた。 モニターには時空管理局地上本部の様々な資料、それも外部に流出すべきではない警備体制や内部構造という類のものである。 そしてもう一つ、眠りにつき血を入れ替えている最中の死人の姿。 男の名はジェイル・スカリエッティ、自他共に認める天才科学者である。 彼は何かを悩みながらキーボードを無意味に叩いて物思いにふけっている、そんな彼に戦闘機人ナンバーズの長女ウーノは熱いコーヒーの御代わりを注ぎながら尋ねた。 「どうなさったんですかドクター?」 「ああ、ウーノか……実は今度の地上本部襲撃の事でね」 「何か問題でも? 特に不安要素は無いと思いますが」 「グレイヴの事さ」 スカリエッティはそう言いながらモニターに前回行われた戦闘の映像を映す、それはグレイヴが倒したフェイトを確保しようとしたセインに制止をかけるものだった。 そしてもう一つの画像がモニターに展開される。それはスバルとギンガのナカジマ姉妹と聖王の器ことヴィヴィオの姿だった。 「ただの戦闘やレリックの奪取ならともかく、少女を誘拐するとなると彼は賛同しないだろうねぇ、それどころか妨害なんかするかもしれないよ…」 「ドクター……グレイヴが邪魔ならすぐにでも殺す準備はできています」 スカリエッティの言葉にウーノは強い意志を込めた瞳で応える、彼女はこの男の為なら邪魔な者を排除するのに躊躇などはしないのだ。 だがスカリエッティはウーノにやれやれといった感じで首を横に振る。 「いや~、それはダメだよウーノ。身体や武器に色々仕込むだけならまだしも、寝首を掻くなんて芸が無いしフェアじゃあないよ」 「なっ……芸とかフェアとかそういう問題ではありません!!」 ウーノはコーヒーを入れていた魔法瓶をブンブンと振りながら顔を真っ赤にして声を荒げる。 スカリエッティはそんな彼女から溜息混じりには視線をモニターに移すとコーヒーを啜りながら物思いにふける。 (本当にどうしたものかな……どういう反応をするのかまったく読めないなんてねぇ。まあそれも面白いから良いんだが) 地下にそびえる鉄の城、そこはジェイル・スカリエッティの有する研究所。 そして死人兵士ビヨンド・ザ・グレイヴとその妹達、ナンバーズの住まう楽しい家でもある。 「……」 「……」 「……」 「……」 「……」 「あああああ!! もう、誰か喋るっすよ!」 ナンバーズ11番ウェンディは彼らに向かって叫んだ。 まあウェンディがこんな風に叫ぶのも無理はない、今彼女の前にはかれこれもう1時間は一言も喋らない無言集団がいるのだから。 先の無言の者達の正体はグレイヴを筆頭にセッテ・オットー・ディエチ・ディードといった生粋の無口系キャラである。 そして彼らはソファに腰掛けてテレビで映画鑑賞の真っ最中だった、無論ポップコーンもなければコーラもなく、ただ静かに眺めているだけだ。 くっちゃべって映画を見るタイプであるウェンディには耐えられない光景だったのであろう、故に彼女は声を上げた。 「静かに」 「ウェンディうるさい」 「今良いところ」 「姉さまお静かに」 「あ~、みんながあたしをいぢめるっす~」 セッテ・オットー・ディエチ・ディード、見事なまでの連携攻撃である。 この流れるような連携技にウェンディは頭を抱えて喚く。 そして、そんな所にクアットロが現われる。 「ま~た、うるさいわねぇウェンディちゃんったらぁ。みんなドクターからお話よ~、次の作戦のだ~いじなお話だから集合よ~♪」 クアットロの言葉に一同はソファから離れる、そして皆と一緒に行こうとするグレイヴの前にクアットロが立ち塞がった。 「グレイヴさん、今日のお話は姉妹だけなんですよぉ? だからちょ~っと一人で待っててくださいね♪」 「………」 グレイヴは静かに頷き、クアットロの言葉に従った。 時は時空管理局地上本部での公開意見陳述会の当日、そして地上本部のとある一室の男はいる。 名をレジアス・ゲイズ、長年に渡り地上の平和を見守ってきた生粋の時空管理局員である。 そして彼の傍らには血の気の無い一人の青年が立っている。 そう、それはまるで“死人”のような血の気の無さだった。 そしてレジアスは通信モニターに映る女性に質問を投げる。 「今日の陳述会での襲撃か……情報道理に行くと思うかオーリス?」 『分かりません、ただ情報源は局に潜入している“機人”ですから可能性は低くは無いかと』 「そうか、では計画の発動準備をしておけ。もし今日だとすれば時期は少々早いが計画を実行する事になる」 『分かりました』 「それとファンゴラム、奴の投入も準備しておけ」 『えっ!? 本当によろしいのですか? もし制御できなくなれば…』 「構わん」 『…分かりました』 会話を終えたレジアスは通信モニターを切り傍らの青年に視線を移すとふと口を開いた。 「お前はどう思うかな? 私の考えは間違っていると思うか?」 「……」 「はっ…答える訳が無いか、死人に口無しとは良く言ったものだ」 レジアスは自嘲的な苦笑を漏らしながら視線を窓の外に向ける。そしてこれから行おうとしている壮大なる謀反に思いを馳せた。 「待っていろ、もうすぐこの地上に完全な平和を与えてやる……今ある全てを破壊してな」 『グレイヴ、準備は良いかい?』 「……」 スカリエッティの通信にグレイヴは無言で頷き手の二丁銃ケルベロスを構える。 二匹の地獄の番犬はその巨大な銃口で静かな威圧感をかもし出していた。 時空管理局地上本部襲撃における確保すべき対象“戦闘機人タイプゼロ”そして“聖王の器”に関する事項は結局グレイヴに伝えられず襲撃作戦を実行する事となる。 これはもしもの場合、彼が妨害や離反をしかねないという可能性を考慮しての事だった。 そうとも知らず、グレイヴは戦闘態勢を整えてガジェットと共に遠距離転送の準備に入る。 そんなグレイヴをチンクが複雑そうな表情で見つめていた。 そして、そのチンクに突然念話通信が入る、それは少し離れた場所に佇んでいたクアットロだった。 (浮かない顔してるわねぇ~チンクちゃん) (クアットロか…) (もしかして罪悪感なんて感じてるの~?) (ああ…少しな、グレイヴを騙すなんて気が乗らないよ…) (はぁ~、チンクちゃんって本当にお馬鹿なのねぇ~) クアットロは呆れたようにメガネを指でかけ直して小ばかにしたような笑みを見せる。 その様にチンクはいささか怒りを宿した眼光で睨んだ。 (何っ!?) (だってそうでしょ? 教えたって喜ばないって分かってるんだから……知らない方が幸せならその方が良いわよ) (…そういうものか?) (そういうものよ、チンクちゃんだってグレイヴさんに悲しい顔して欲しくないでしょ?) (ああ、そうだな……しかし“私だって”という事はクアットロもグレイヴの事を心配しているんだな) (なっ!? ち、違うわよ! 変な事言わないでちょうだい!) クアットロはそう言うと即座に通信を切ってそっぽを向いた、離れた場所からでも分かるくらいに彼女の顔は赤く染まっていた。 本来は姉妹の中でもっとも冷静であり冷徹である筈のクアットロの変化にチンクは思わず微笑を零した。 「まったく…クアットロも随分と変わったな」 そう小さく呟きながらコートの内側に仕舞われた投擲専用のダガーナイフを確認して転移魔法陣へと足を進め今夜の戦場である地上本部へと向かった。 こうして小さな機人の少女は足を踏み入れる、血と硝煙の匂いに満ちた地獄の門前へと。 地上本部で行われていた公開意見陳述会。 管理世界の首脳陣を招いて開かれたこの席をスカリエッティもしくはそれに順ずる勢力による襲撃を教会騎士であるカリム・グラシアの持つ希少技能により予言されていた。 そしてその予言は現実のものとなる。 地上本部は突如として現われる無数のガジェット・ドローン、そしてそれを従えて銃火の華を咲かせる死人兵士の猛攻を受ける事となる。 「くそぉっ!!」 「死ねっ! 死体野郎がっ!!!」 地上本部の警備に当たっていた局の武装隊が怒号を発しながら手にしたデバイスから殺傷設定にされた射撃魔法を雨の如く射出する。 だが彼らの貧弱な攻撃では最強の死人兵士を倒すにはあまりに遠く、地獄の番犬の吐き出す銃弾の餌食となっていく。 飛び交う魔力弾の集中砲火を転がり避けながらケルベロスの銃弾が返答として返される、下手な威力の攻撃では傷一つ付かない死人兵士の身体に歴戦の殺し屋としての本能が確実に武装局員の数を減らしていった。 「……」 グレイヴの手にした二丁銃ケルベロスが硝煙と薬莢の転がる音を周囲に満たした時、そこで動く者は彼を除いて皆無となる。 周囲の制圧を終えたグレイヴがふと天を仰いだ時それは映った、それは天空で交錯する二つの光だった。 「くっ! こいつ強えぞ…」 地上本部に迫る謎の魔道騎士、ゼストと交戦に陥ったヴィータはリィンフォースとの融合を果たしているにも関わらず苦戦を強いられていた。 ゼストの魔力はオーバーSランク以上と測定されているだけあって簡単に勝てる相手ではない、他の部隊員を案ずる気持ちもありヴィータの心中に焦りの色が濃くなっていく。 「こうなったら、ギガントで…」 ヴィータがそう小さく呟いた刹那、地上からヴィータ目掛けて高速の物体が飛来する。 それは見覚えのあるロケットランチャーの弾頭、かつて相対した死人が放ったのと同じものだった。 「きゃあああぁっ!!」 ヴィータはそのランチャーの攻撃に直撃して地上へと落ちていく、ランチャーの攻撃と同時に展開された高濃度のAMFにより彼女の防御障壁の出力は絶望的に下がっていたのだ。 突然の救援により眼前の敵を倒せれたゼストは唖然として地上へと目を向ける、そこには手に巨銃を背に棺を持った死人兵士が立っていた。 そして言葉もなく交錯した視線で彼の思考を悟る。 グレイヴは目で語った“早く行け”と。 「すまんな」 ゼストは静かにそう呟くと地上本部へと向かった、かつての親友へと会うために。 「くっそぉ……あの死体野郎がぁ…」 ヴィータは毒づきながら、落下の衝撃にひび割れたアスファルトの上で自身のデバイスを杖代わりにして立ち上がった。 目の前の敵に意識を集中していたとはいえ、以前受けた攻撃で地に落とされるような醜態を晒した事に激しい怒りを呼び起こされる。 そして、そんな彼女の前に件の死人が悠然とした歩調で現われた。 「やってくれたじゃねえか、死体野郎!」 「……」 ヴィータは怒りに燃える瞳で睨み付け手にしたデバイス、鉄の伯爵グラーファイゼンを構えた。 グレイヴもまた無言で以って手のケルベロスを構える。場に鋭く重い空気が流れたその刹那、ヴィータの元に心強い救援が駆け付けた。 「ヴィータちゃん! 大丈夫!?」 「ああ」 それは、機動六課スターズ分隊隊長である高町なのはその人である。 まるで初めて相対した時のような状況でなのははレイジングハートをグレイヴに向けて構える。 そして胸中にかつて親友であるフェイトと初めて会った時の事を思い出した。 (初めては敵同士だった……でも言葉を交わせば、想いを知ればきっと分かり合える…だから私は……) 胸中の走る思いに決心をつけたなのはは、決して屈せぬ強き思いを抱き口を開いた。 「私はなのは、高町なのは! あなたのお名前、教えてください!!」 「ちょっ…なのは、何言ってるんだよ! そんなん意味ねえ…」 ヴィータがそう言いかけた刹那、二人の前に立った死人兵士は小さな呟きを漏らした。 小さな声だった、だが良く澄んだ残響が二人の耳に響いた。 「……ビヨンド・ザ・グレイヴ」 グレイヴの漏らしたその言葉に一瞬唖然とするなのはとヴィータ、だがなのはは彼の言葉を己が胸に刻み付けそして口を開いた。 「グレイヴさん……どうしてこんな事をするのか、お話聞かせてもらって良いですか?」 「………」 返答は無言と共に構えられた巨大な二丁銃、だが彼の目は手の冷たい鉄塊とは裏腹に熱い戦意に満ちていた。 そしてグレイヴの眼光になのはは理解する、彼が何を考えているのかを。 “聞きたければ自分を倒して見せろ”と。 「それじゃあ行くよヴィータちゃん」 「ああ、望むところだ」 こうして最強の死人兵士と最高の砲撃魔道師の戦いが再び始まる。 地獄の番犬と不屈の心の咆哮と共に。 同じ時刻、地上本部の一角においてゼストはかつての親友と相対していた。 男の名はレジアス・ゲイズかつて夢を共にした朋友である。 「久しいな、レジアス」 「ああ」 「一つ聞く……俺と俺の部下を殺したのはお前の差し金か?」 「だったら……どうした?」 「許さん!!」 「そうか……」 レジアスは静かにそう言うと指を鳴らす、音が響くと同時に壁越しに高出力の射撃魔法がゼストに襲い掛かり防御障壁とバリアジャケットを貫通して鮮血を散らす。 「ぐうっ!!」 ゼストは即座にデバイスを構えて壁越しに攻撃してきた未知の敵に構える。 緊迫する空気とは対照的に敵は崩れた壁を跨ぎゆっくりと部屋に入ってきた。 「ではやれ……“ティーダ”」 かつて死した管理局の若き魔道師、ティーダ・ランスターは死人となって再びこの世を歩く。 ただ破壊と殺戮を与える為に。 続く。 前へ 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/1941.html
彼女の不運 月村すずか。彼女はただ単に運動神経がいいだけの、普通の女だった。 唯一変わっている点といえば、その人脈のみ。魔法使いや仮面ライダー、果ては異世界人までもが彼女とは顔見知りである。 だが、それ以外は何も変わらない、前述の通りの普通の女だった。だから、こんな殺し合いには呼ばれるいわれは無いはずである。 それなのに…… 「殺し合いだなんて……どうして、こんな事に……!」 彼女は今、会場南東部の森の中にいた。 なのは達から次元世界の事や次元犯罪者については聞いていたから、こんな風にいろいろな世界から人をさらうなんて芸当をやる人物も出るだろうとも予想は可能。 ただ、彼女は自分がそれに巻き込まれるとは思っていなかったらしい。狼狽が見て取れる。 おまけに、最初に見せられたスプラッタショーもその狼狽を強める一因になっていた。 辺りにはビュンビュンと音を立てて、強風が吹き荒れる。今なら周りに誰がいても気付かないだろう。 ……と、その状態からある事を思い出した。最初に十代が言っていた言葉である。 『お前たちを会場へと飛ばす、こちらで用意した支給品と一緒にな』 「そ、そうだ、支給品……」 思い切り混乱しながらも、それだけ思い出したすずかはすぐに周りを見る。 そして、見つけた。自分の分とおぼしきデイバッグを。さっそく開き、中身を確認。 まず初めに出てきたのは、折りたたまれた一枚の紙。開いてみると、大量の名前が記されていた。 これだけ多くの名が書かれているという事は、これは参加者名簿なのだろう。 出来れば自分の他に誰も来てないでほしいと願いつつ、すぐに目を通す。そして、見つけた。 「嘘……なのはちゃん、フェイトちゃん、はやてちゃん……!」 よりにもよって彼女の親友が三人も呼ばれていた。最後の一人であるアリサが呼ばれていないだけまだマシなのだろうが。 そして、もうしばらく読み進めると……彼女にとって、最も呼ばれていてほしくない人物の名があった。 「え……!!??」 もはや驚愕と混乱で、言葉も出ないらしい。 先程見つけた親友の名。それだけでもショックは大きい。そしてその上に、彼女の恋人……キョウキの名が記されていたのだ。無理も無いだろう。 現在の彼女の状態は、仰天を通り越して石化といっても過言ではない程度に固まっていた。 数分後、ようやく正気に戻ったのか、再び行動が開始された。 この近くに殺し合いに乗った人物がいれば確実に死んでいたが、運良く乗った者は誰もいなかったらしい。彼女が生きているのがその証明だ。 そして、名簿を見た彼女が最初に行ったのは、その行動方針の確定。 「殺される前に、ここから逃げなきゃ……なのはちゃん達と、センパイと一緒に!」 その名簿に記された名。その主とともにこの会場から逃げるという行動方針を。 ならば、当面の目標はそのメンバーの捜索、そして自身の生存である。死んでしまっては探せるものも探せない。 ふと、自分で言った「殺される前に」という言葉を頭の中で反芻し、そして身震いする。 こんな物に自分の仲間は決して乗りはしないと信じてはいるが、何しろここには70もの参加者がいるのだ。その中の誰が乗っているとも限らないのである。 そして、その乗っている相手に見つかれば、非力な自分などすぐに殺されてしまうだろう。 そうならないためにも、自衛の必要がある。幸い手元には支給品がある。最低限の自衛に使えそうなものくらいは入っているだろう。 そう思って支給品を調べ……取り出したのは一枚の封筒。開いて中身を取り出す。 その中身である紙には、「ハズレ 残念でした」としか書かれていなかった。 「え、嘘、まさか!?」 まさかこんなものしか入っていないのか。そう思ってデイバッグの中身を穿り返す。 そしてその結果、出てきたのは地図や食料などの基本的な支給品だけであった。 実を言うと封筒にはサバイブ『烈火』と呼ばれるカードも入っているのだが、すずかはそれに気付かない。 まるで主催者が言外に「さっさと死ね」とでも言っているかのようなセレクト。それは死を確信させるには十分だった。 最初に立てた目標が真っ先に一つ否定され、それはすずかを絶望に叩き落とす。 そして自身の生存を絶望視し、泣いた。 さて、すずかにとっての不運は、実はもう一つだけあった。 それは、彼女が探そうとしていた人物の一人、八神はやてが近くにいた事である。 探したい人物が近くにいるというのは、普通なら喜ぶべきことだろう。だが、この場合は違う。 辺りには前述の通り強風が吹き荒れているので、風の音のせいで互いの存在に気付かないのだ。 そしてすずかが絶望している間に、はやてはさっさと移動を始めてしまった。それも今すずかがいる方向とは真逆の方へと。 ……つまり、近くにいた探し人とは完全にニアミスしてしまったという事である。もはや不運を通り越して神に嫌われているとしか思えない。 これが永遠の別れとなるのか、それともどこかで会えるのか……それはたった今「すずかを嫌っているのではないか」と評した神ですら分からないだろう…… 【一日目 AM1 22】 【現在地 I-9 森の中】 【月村すずか@リリカルなのはStrikerS+仮面ライダー】 [参戦時期]第二部平成ライダーサイド三話、キャンプ中 [状態]健康・生還を絶望視 [装備]なし [道具]支給品一式・封筒(中に「ハズレ 残念でした」と書かれた紙と、サバイブ『烈火』@リリカルなのはStrikerS+仮面ライダーが入っている) [思考・状況] 基本.キョウキや仲間と合流し、この会場から逃げる 1.絶望した! あまりのハズレ支給品に絶望した! 2.なのは達やキョウキを探す [備考] ※近くにいたはやてに気付きませんでした ※狼狽しまくっていたため、なのはとフェイトの名が二つある事に気付いていません ※サバイブ『烈火』に気付いていません さて、今度はその今しがたニアミスした八神はやてへと目を向けてみよう。 彼女がここを立ち去るよりもほんの少し前、はやてもまた、支給品を確認していた。 最初に出てきた氷の剣アイスソード、これはまだいい。重量はあるが、両手持ちなら使えなくは無いだろう。 問題は、次に出てきた支給品である。 「な、何やこれ? 重……」 やたら重く、白い箱のようなもの。それがはやてに支給されたものである。 あまりの重さに四苦八苦しながらも何とか取り出し、そしてその正体を理解した。 「……何で冷蔵庫なんか支給されてるんやろ?」 支給された白い箱、その正体は冷蔵庫だった。なるほど、これならば重いのも納得がいく。 しかもミッドチルダに引っ越すまでの間、八神家で使っていたものと同型のもの。どこで手に入れたのだろう? 開けてみると、ちゃんと冷蔵庫としての機能も動いており、さらに色々食材も入っている。 ちなみにコンセントはささっていない。どうやったのかは知らないが、バッテリー式にでも改造したのだろう。 上段の冷凍庫にも、ちゃんと中身は入っている。何故かイチゴのカップアイスが10個も。木のヘラもセットで。 ちょうど小腹が空いていたのだろうか、アイスとヘラを一つずつ取り出し、それを口に運んだ。 「そう言えば、ヴィータはイチゴのアイス好きやったな」 アイスを食べながら、頭に思い浮かぶのは今はいない家族の顔。家族の好物を食べている事が、それを思い起こさせているのだろう。 「……あれ? 変やな、このアイス、しょっぱいわ……」 はやてはそう言いながら、アイスを食べ進める。自身の涙のかかったアイスを。 そしてアイスを食べ終わる頃、視界にとある四文字のカタカナが入る。 名簿に書かれた『ヴィータ』の四文字が。 すぐにアイスのカップを放り出し、名簿を取り出して読み進める。そしてそれが見間違いではないという事がはっきりした。 それだけではない。他にもシグナム、シャマル、ザフィーラ、そして……十年前に消えたはずの、リインフォースの名が書かれている。 他にも六課の仲間や親友の名が書かれていたが、そんなものはもはや目に入らない。 ただ、いなくなった家族がこの会場にいる。彼女にはその事実だけで十分だ。 ただ、今の彼女には多少疑わしく思っていることがある。それは―――― 「リインフォース、やて……?」 ――――リインフォースの存在である。 彼女は十年前に消えた、言わば今は存在しないはずの人物である。 後に同名のデバイスを作り上げたが、それはリインフォース『Ⅱ(ツヴァイ)』。もしもそちらのリインなら、Ⅱの表記があるだろう。 ところが、この名簿にはその表記が無い。となれば……十年前に消えたリインフォース本人か、同名の別人だ。 ちなみにいつもの彼女なら、リインフォースが本物かどうかもう少し考えただろうが……アイスソードの副作用「持ち主の知力を下げる」により、判断が単純化。本人だと疑っていない。 いずれにせよ、彼女の方針は決まった。冷蔵庫と名簿をデイバッグに収納し、アイスソードを手に駆ける。 (急がなあかんな……みんなが、殺される前に!) 八神はやては会場を疾駆する。全ては家族に会うために。 ちなみに他の事は……親友の事すら頭に無い。これもまた、すずかにとっての不運と言えるだろう。 【一日目 AM1 22】 【現在地 I-9 森の中】 【八神はやて@魔法少女リリカルなのはFINAL WARS】 [参戦時期]ミッドチルダ1終了後 [状態]健康 [装備]アイスソード@リリカルなのはMS [道具]支給品一式・冷蔵庫(中身はイチゴ味のカップアイス9個+食材) [思考・状況] 基本.家族に会いたい 1.シグナム・ヴィータ・シャマル・ザフィーラ・リインを探す 2.それ以外は今の所度外視 [備考] ※近くにいたすずかに気付きませんでした ※アイスソードの副作用により、多少頭が悪くなっています ここで天気予報です。 現在J-9地点を中心とした気圧性の強風が吹き荒れています。 低気圧は半径2エリアほどの小規模なものですが、風以外の音を消すには十分な強風です。 現在はまっすぐ北西に向かっており、このままのペースならば二日目の昼にはA-0地点を通過するでしょう。 夜の闇と風の音に紛れて迫るマーダーに殺られぬよう、軌道上の参加者の皆様は、十分にご注意ください―――― [備考] ※J-9地点に移動性の低気圧(半径2エリア)による強風が吹いています。 低気圧はゆっくり北西に向かっており、おそらく二日目の昼にはA-0地点を通過します。 また、強風の音でよほどの大きな音以外はかき消されるようです。 046 本編投下順 048
https://w.atwiki.jp/akisuteno/pages/34.html
魔法少女リリカルなのはStrikers 高町なのは フェイト・T・ハラオウン 八神はやて SP:127 能力 コマンド 消費 SP:124 能力 コマンド 消費 SP:128 能力 コマンド 消費 性格:普通 格闘140 集中 15 性格:冷静 格闘152 直感 20 性格:普通 格闘137 集中 10 射撃153 直感 20 射撃146 迅速 20 射撃152 分析 20 防御110 狙撃 15 防御 99 集中 15 防御 98 直感 20 成長:普通型B+ 技量181 てかげん 1 成長:普通型B 技量181 突撃 30 成長:普通型B 技量181 直撃 30 回避174 魂 50 回避179 魂 50 回避172 友情 35 命中178 愛 65 命中175 絆 55 命中181 期待 60 スバル・ナカジマ ティアナ・ランスター SP:126 能力 コマンド 消費 SP:119 能力 コマンド 消費 性格:強気 格闘151 加速 15 性格:普通 格闘139 必中 20 射撃138 集中 15 射撃151 努力 15 防御104 不屈 10 防御 97 狙撃 15 成長:晩年型A+ 技量173 闘志 30 成長:晩年型A+ 技量175 集中 15 回避172 気迫 50 回避170 熱血 35 命中173 魂 55 命中177 かく乱 55 エリオ・モンディアル キャロ・ル・ルシエ SP:121 能力 コマンド 消費 SP:127 能力 コマンド 消費 性格:普通 格闘146 集中 15 性格:普通 格闘129 分析 20 射撃136 必中 25 射撃145 応援 35 防御103 気合 30 防御101 信頼 20 成長:晩年型S 技量167 突撃 30 成長:晩年型A+ 技量165 直感 20 回避171 不屈 15 回避166 直撃 35 命中171 勇気 60 命中173 覚醒 70 隊長たち3名は、能力的にはガンダム系のエースパイロットに似た設定にしている。 フォワード4名は才能あふれる新人として、全員大器晩成型の成長タイプにした。。 なのはに関しては、フォワード人の教官としての立場や模擬戦から、てかげんを導入。 愛を習得させるか不屈を習得させるかで迷ったが、彼女の本来の優しさを表すために愛で決定した。 防御系魔法と、元々の素質から防御値は高くした。 射撃値の大きさや命中値、コマンド等から、高機動・射撃戦主体のキラと似たスタンスになっている。 (没となったコマンド 不屈・激励・直撃) フェイトは格闘戦メイン、ライオットザンバー等の武器から突撃を採用。 なのはよりも高機動な為、迅速を所持している。 遠距離戦もこなす為、なのはに比べて全体的なバランスは良い。 最後のコマンドの絆は、無印からの引用。 愛はなのはに譲った。 (没となったコマンド 気合・愛・友情) はやての能力値は広域魔法による殲滅戦をモチーフにしている。 格闘値については、本人が接近戦を捨てているため極力低くした。 SSランク魔導師だが、なのは達に比べて実戦経験がそこまで多くないので、技量値は同じになった。 Asの頃の設定を残し、絆を取るか友情を取るかでフェイトと比べたが、現在はこれで安定した。 彼女の家庭的な優しさから、こちらの方がしっくりくるかもしれない。 (没になったコマンド 絆・覚醒) スバルは、戦闘機人としての能力は反映されていないが、格闘主体としての能力を色濃く設定した。 射撃値は、ディバインバスターがあるが遠距離砲撃とは言い難いので、低く設定した。 ウイングロードがあるので加速を設定。他のキャラにも使えるので、追風でもいいかもしれない。 戦闘機人としての〔覚醒〕は、気迫と闘志に代わりオミットされた。 (没になったコマンド ド根性・気合・突撃・覚醒) ティアナは、本人が認めている努力を軸として設定している。これは彼女という存在の最低条件でもある。 凡人と言っているがそんなことは無い。 最初のコマンドを、集中か必中かで迷ったが、二丁の銃を扱いこなす素質から必中になった。 幻術使いでもあるので、かく乱を設定した。 (没になったコマンド 根性・ひらめき・信頼・直撃・突撃・) エリオは唯一の少年キャラであり、ガリューに恐れず立ち向かったキャラの為、必然的に勇気を覚える。 子供の為、一般的なキャラよりもコマンドの消費は多い。 瞬発力は高いため、フォワードで2番目に高い。 技量値は10歳の子供にしては高く設定した。 (没になったコマンド エリオは迷わず確定した。) キャロはサポートが主なので、他の3人に比べて能力は低い。 サポート関連として応援を所持している。 召還魔導師として、覚醒を設定した。 感応は、今作に登場しないリインフォースが担当するので設定しなかった。 (没になったコマンド 幸運・感応・集中)
https://w.atwiki.jp/sinsougou/pages/239.html
機動戦士ガンダムSEED DESTINY この保管庫及びスレの主人公、シンの登場作品 前作SEEDの続編に当る。 いろいろと物議を醸し出した作品ではあるものの高い人気を誇る。 余談だが、某巨大匿名掲示板にて前作信者が大暴れし、板分割騒動にまで発展した。 つまりそれだけの信者が出るほどの人気ってこと ◇6Pgs2aAa4k氏 ■ 種が割れません ├ 種が割れません-01 └ 種が割れません-02 ひぐシン ◇LuqsQs0P4w氏 ■ 実録女難アカデミー ├ 実録女難アカデミー-01 ├ 実録女難アカデミー-02 └ 実録女難アカデミー-03 単発 ルナマリアは801ちゃん◇aIpku7p69c氏 ■ ルナマリアは801ちゃん ├ ルナマリアは801ちゃん-01 ├ ルナマリアは801ちゃん-02 └ ルナマリアは801ちゃん-03 酔っ払い◆otMjeU4QDY氏 一応本人は続けるつもりらしい・・・ 単発 タピオカ丼氏の作品 誕生日 ■ タピオカ丼氏の単発 ├ タピオカ丼氏の単発-01 ├ タピオカ丼氏の単発-02 ├ タピオカ丼氏の単発-03 └ タピオカ丼氏の単発-04 簿記入門 ◆rxZFnGKLCg氏の作品 ■ 簿記入門 ◆rxZFnGKLCg氏の単発 ├ 簿記入門 ◆rxZFnGKLCg氏の単発-01 └ 簿記入門 ◆rxZFnGKLCg氏の単発-02 そろそろ氏の作品 ■ そろそろ氏の小ネタ ├ そろそろ氏の小ネタ-01 └ そろそろ氏の小ネタ-02 DSS ◆.E8L0Z7RgA氏の作品 ■ DSS ◆.E8L0Z7RgA氏の小ネタ └ 『機動戦士ガンダムチート~オノゴロ島で────ぶっちぎるぜ!!~』 ◆V6ys2Gwfcc氏の作品 ■ ◆V6ys2Gwfcc氏の小ネタ ├ ◆V6ys2Gwfcc氏の小ネタ-01 ├ ◆V6ys2Gwfcc氏の小ネタ-02 ├ ◆V6ys2Gwfcc氏の小ネタ-03 └ ◆V6ys2Gwfcc氏の小ネタ-04 アクアビットマン氏の作品 ■ アクアビットマン氏のDESTINYネタ └ アクアビットマン氏のDESTINYネタ-01 単発SSや小ネタ集 ■ DESTINY小ネタ ├ DESTINY小ネタ-01 ├ DESTINY小ネタ-02 ├ DESTINY小ネタ-03 ├ DESTINY小ネタ-04 ├ DESTINY小ネタ-05 └ DESTINY小ネタ-06 DESTINY単発-01←黒めな展開多し ■ 単発SS集 ├ DESTINY単発-02 ├ DESTINY単発-03 ├ DESTINY単発-04 ├ DESTINY単発-06 ├ DESTINY単発-07 ├ misfortune ├ DESTINY単発-08 ├ DESTINY単発-10 ├ DESTINY単発-11 └ DESTINY単発-12 種とワイシャツと…… 誕生日プレゼント 鮒聖母 元ネタ別インデックスへ 作者別インデックスへ トップページへ
https://w.atwiki.jp/nanoharow/pages/579.html
一人分の陽だまりに 僕らは居る ◆vXe1ViVgVI ◆ ◇ ◆ ◇ 終わった、と迫る刃を前にヴァッシュは思いを巡らせた。 この地獄のような人生にようやく終焉が訪れる。 待ち望んでいた訳ではない。でも、もう限界だった。 人々を助けくて、でもこんな身体で、クロノが死んで、なのはが死んで、ナイブズが死んで、フェイトを殺して――……。 それでも前へ進みたくて、でも前へ進めば進ほど、全てを傷付けてしまう。 もう、限界だった。 救いたい命、救えない命、殺してしまった命、殺してしまう命。 果てなく続く苦悩と絶望の輪廻。 だが、それもこれで終わる。眼前の剣士が終わらせてくれる。 ヴァッシュは、刃が届くまでの刹那の時を瞼を閉じ、安らかな頬笑みを持って待ち構える。 ただ一つ、新庄の安否だけを気掛かりにして、一世紀半もの永きを渡り歩いた人外は死を待ち迎え、 斬。 ―――痛みというには余りに甘美な感覚が身体を駆け巡った。 即死というわけではないが、死へと辿り着くには大した時間も掛からないだろう。少なくとも今までの地獄の時からすれば、ほんの一瞬だ。 ああ、やっと解放される。 そんな思考を浮かべながら、ヴァッシュはある光景を見る事となった。 その光景とは自分に向かって精一杯腕を伸ばす実兄の姿。 この殺し合いの場で死んでしまった同胞。 そして自分に地獄と称する事すら生温い、絶望の半日を味あわせた張本人。 いや、それだけではない。 人類があの砂の惑星で死と隣り合わせの生活を送らざるを得なくなった原因も、 砂の惑星で同胞達が疲弊の限りを尽くして稼働をし続けざるを得なくなった原因も、 自分達を育て、様々な事を教えてくれた女性が死んだ原因も、 全てが全てこの男だ。 何故、そのお前が自分に向けて手を伸ばす。 まるで掴んでくれと言わんばかりに、手を伸ばしている。 無理だ。 自分には出来ない。 あの砂の惑星での記憶が、ロストジュライでの記憶が、この殺し合いの中での記憶が、お前を否定する。 唯一の同胞であり、兄であるお前との共存を拒み続ける。 ヴァッシュは必死の形相で手を伸ばす兄の姿から顔を逸らし、背中を向けた。 共に歩んでいた筈の道。何故唯一の同種達は、決して交わる事のない道へと別々に歩んでしまったのか。 今となっては誰にも分かる筈がない。 ただ兄のせいで無限に続く過酷な人生を送った弟は、最後の最後その手を取り合おうとはしなかった。そして、弟は兄と正反対の方向へと歩み始めようと一歩踏み出し、そこで――― ―――ある女性の姿を思い出した。 ◆ ◇ ◆ ◇ あの時、彼女は何と言ったのだろう。 震動と轟音にかき消された言葉――― ◆ ◇ ◆ ◇ わずか一度の交錯により決した勝負。 時間にしては五秒にも満たない程の超々短期決戦。 それでもアンジールは脳髄が麻痺する程の重厚な疲労を感じていた。 勝機はなかった。皆無といっても過言ではない。 ただあの男の必死の抵抗があったからこそ、勝利できた。 そうでなければ接近する事すら不可能であったろう。 「……お前のおかげだ、ヴァッシュ」 アンジールの足元にはヴァッシュ・ザ・スタンピードが倒れていた。 渾身の斬撃によりその身体から夥しい量の血液を流し、倒れ伏す。 ただヴァッシュは―――死んでいなかった。 勿論、常人であればその出血量は致死。だが、プラント自立種の人間離れした耐久力がその命を繋ぎ止めた。 生存の代償として払われたのは、その左腕。 倒れるヴァッシュの直ぐ傍らには、肩部から切り離された彼の左腕が転がっていた。 全ての原因であるその左腕が、転がっていた。 「俺は戦い続ける事しかできない……闘争以外にあいつ等を守る術が見付からない……だから―――頼む」 例えるならばアンジールは剣。 触れる物全てを斬り裂き、斬り裂く事で家族の害なす存在を減らし、家族を守ろうとする。 それもまた一つの守護の手段。善悪の是非はあれど、対象の守護という点では間違いとは決して言えない。 「あいつ等を、守ってやってくれ」 しかし、守護の手段はそれだけでは無い。 手段はもう一つ、存在する。 攻撃的な剣の守護とは対となる、言うなれば盾の守護。 剣も、槍も、銃弾も……有象無象の区別なく、その身が朽ち果てるまで全てを守る盾。 常に守護対象の側に佇み、いざとなれば身を挺してでも護りきる。 それが、盾の守護。 「俺は戦い続ける。あいつ等を守る為に」 アンジールがヴァッシュを殺害しなかった理由は一つ、ヴァッシュを信頼したからだ。 絶望に潰される瀬戸際でさえ、他人を救おうと動き続けたその強靭な意志。 こいつなら、この男になら、彼女等を任せられる。 そう思ったから、アンジールはヴァッシュを殺害せず、寸前で太刀筋を曲げ彼に巣くう諸悪の根源を切り離した。 この男なら必ず復活せしめると信じていたからこそ、アンジールはヴァッシュを殺さないですませた。 その荒療治でヴァッシュの暴走が阻止できるという確信など無かったにも関わらず、アンジールは微細な可能性を信じて、賭けた。 アンジールの選択が正しかったのか、答えはまだ出ていない。 それでもアンジールはヴァッシュに背を向け、歩き始めていた。 白銀の拳銃を一つ、その場に置いてアンジールは前へと進む。 この男なら立ち上がる―――そう信じて、アンジールは再び死闘の場を後にした。 【1日目 夕方】 【現在地 I-2】 【アンジール・ヒューレー@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使】 【状態】疲労大、脇腹、右腕、左腕に中程度の切り傷、全身に小程度の切り傷、セフィロスへの殺意、深い悲しみと罪悪感、焦り 【装備】バスターソード@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、チンクの眼帯 【道具】支給品一式×2、レイジングハート・エクセリオン@魔法少女リリカルなのはStrikerS、グラーフアイゼン@魔法少女リリカルなのはStrikerS 【思考】 基本:チンクとクアットロを守る。 1.チンクとクアットロ以外の全てを殺す。特にセフィロスは最優先。 2.イフリートを召喚した奴には必ず借りを返す。 3.ヴァッシュと再び出会ったら…… 4.いざという時は協力するしかないのか……? 【備考】 ※ナンバーズが違う世界から来ているとは思っていません。もし態度に不審な点があればプレシアによる記憶操作だと思っています。。 ※レイジングハートは参加者の言動に違和感を覚えています。 ※グラーフアイゼンははやて(A's)の姿に違和感を覚えています。 ※『月村すずかの友人』のメールを確認しました。一応内容は読んだ程度です。 ◆ ◇ ◆ ◇ その時、スバル・ナカジマと泉こなたの二人はF―8に位置する草原を歩いていた。 先導するはスバル・ナカジマ。油断なく周囲に視線を飛ばし、慎重に安全を確認しながら一歩一歩を進めていく。 そんなスバルの直ぐ後方には泉こなた。彼女もまた周囲に視線をやり、彼女なりの警戒をしながら、歩いている。 目的地であるホテル・アグスタには、もう視認できる距離にまで接近している。 この様子ならば、警戒を飛ばしながらの緩慢な行進であっても、放送までにホテル・アグスタへと到着できるだろう。 そう考えながら、スバルは思わず安堵の息を零し掛け、そして自制するかのように頬を軽く叩いた。 まだホテル・アグスタに到着した訳ではないのだ。一瞬の油断が死に直結する可能性だって大いに有り得る。 安堵するのは、せめてアグスタに到着して内部の安全を確認してからだ。 気を、引き締めろ。 油断を、するな。 「……ねぇスバル。あれ、なんだろ……」 と、スバルが警戒心を再燃させたその時、後ろを歩いているこなたが唐突に、呆然とした口調で言葉を吐いた。 唐突な言葉に反応したスバルが後方へと振り返ると、そこには目を見開き、ポカンとだらしなく開口するこなたの姿。 その視線は平常より上の箇所―――つまりは空を見詰めたまま、固定されていた。 尋常ならざるこなたの様子に、スバルもその視線を追い、空を見る。 そして、同様に、動きを止めた。 「な、なんなんだろ……」 そこにいたのは、暁の空を飛行する人間の姿。 いや、スバル達が驚愕している理由はその人間が空を飛んでいるから、という訳ではない。 魔導師であるスバルからすれば、人が飛行している光景など殆ど日常茶飯事と言っても良い。 常人であるこなたも、スバル達から得た情報やこの場で経験した様々な奇想天外により、人一人飛んでいようと驚愕に至る事はないだろう。 驚愕の理由は、もっと他の所にあった。 「天使、かな……?」 「ま、まさかぁ……」 こなたの発言に頬をひきつらせながらも、スバルはその正体を読み取れずにいた。 空を飛ぶ人間の両肩に生えた、数メートルは有ろうかという巨大な双翼。 それを上下に揺らし、優雅に空を舞うその姿はまさに神話で出て来る天使のように見える。 あれは明らかに魔法を使用しての飛行ではない。自身の翼で物理的な作用を生み出しての飛行。 人間である限り、有り得ることのない飛行法だ。 「あれ? あの天使さん、もしかして」 「ホテル・アグスタに……?」 その天使のような飛行物体は、スバル達の目の前で高度を下げていき、遂には遠くに聳えるホテル・アグスタのその屋上へと消えていった。 数秒ばかり天使が消えていったアグスタを見詰めたスバルとこなたは、首を回し顔を見合わせる。 「……どうしよっか」 「……どうしよう」 顔を見合わせたまま二人は互いに問い掛ける。 あの天使のような飛行体は何だったのか。 参加者だとすれば殺し合いに乗っているのか、乗っていないのか。 自分達は接触を図るべきなのか、否か。 様々な疑念が二人の間に浮かび上がり、漂い続ける。 このような場面でこそ、最適な判断を下してくれるであろう少年は、もういない。 自分達だけで考えねばならないのだ。 二人は草原に立ち尽くし、遠方にて悠々と聳えるホテルの姿へ視線を移し、見詰め続ける。 【1日目 夕方】 【現在地 F-8 東部】 【スバル・ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】 【状態】全身ダメージ小、左腕骨折(処置済み)、ワイシャツ姿、質量兵器に対する不安、若干の不安と決意 【装備】添え木に使えそうな棒(左腕に包帯で固定)、ジェットエッジ@魔法少女リリカルなのはStrikerS、 【道具】支給品一式(一食分消費)、スバルの指環@コードギアス 反目のスバル、救急道具、炭化したチンクの左腕、 ハイパーゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード、チンクの名簿(内容はせめて哀しみとともに参照)、 クロスミラージュ(破損)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、首輪×2(ルルーシュ、シャーリー) 【思考】 基本:殺し合いを止める。できる限り相手を殺さない。 0.なんだったろ、さっきのは…… 1.ホテル・アグスタへ向かう、道中での警戒は決して怠らない。 2.1の後、スカリエッティのアジトへ向かう。 3.六課のメンバーとの合流とつかさの保護。しかし自分やこなたの知る彼女達かどうかについては若干の疑問。 4.準備が整ったらゆりかごに向かいヴィヴィオを救出する。 5.こなたを守る(こなたには絶対に戦闘をさせない)。 6.かがみを止める。 7.状況次第だが、駅の車庫の中身の確保の事も考えておく。 8.もしも仲間が殺し合いに乗っていたとしたら……。 【備考】 ※参加者達が異なる時間軸から呼び出されている可能性に気付きました。 ※仲間(特にキャロやフェイト)がご褒美に乗って殺し合いに乗るかもしれないと思っています。 ※自分に割り振られた調査エリアを調べ終えました。何かを見つけたか否かは後続の書き手さんにお任せします。 ※アーカード(名前は知らない)を警戒しています。 ※万丈目とヴァッシュが殺し合いに乗っていると思っています。 ※アンジールが味方かどうか判断しかねています。 ※千年リングの中に、バクラの人格が存在している事に気付きました。また、かがみが殺し合いに乗ったのはバクラに唆されたためだと思っています。但し、殺し合いの過酷な環境及び並行世界の話も要因としてあると考えています。 ※アニメイトを焼きヴィヴィオを浚ったのはルーテシアかキャロの可能性が高く、浚ったヴィヴィオを利用してゆりかごを起動させようとしていると考えています。 ※15人以下になれば開ける事の出来る駅の車庫の存在を把握しました。 ※クロスミラージュが修復可能かは後続の書き手さんにお任せします。 ※こなたの記憶が操作されている事を知りました。下手に思い出せばこなたの首輪が爆破される可能性があると考えています。 【泉こなた@なの☆すた】 【状態】健康 【装備】涼宮ハル○の制服(カチューシャ+腕章付き)、リインフォースⅡ(疲労中)@魔法少女リリカルなのはFINAL WARS 【道具】支給品一式、投げナイフ(9/10)@リリカル・パニック、バスターブレイダー@リリカル遊戯王GX、レッド・デーモンズ・ドラゴン@遊戯王5D's ―LYRICAL KING―、救急箱 【思考】 基本:かがみん達と『明日』を迎える為、自分の出来る事をする。 0.天使……? 1.スバルやリイン達の足を引っ張らない。 2.かがみんやつかさが心配、これ以上間違いを起こさないで欲しい。 3.おばさん(プレシア)……アリシアちゃんを生き返らせたいんじゃなくてアリシアちゃんがいた頃に戻りたいんじゃないの? 【備考】 ※参加者に関するこなたのオタク知識が消されています。ただし何らかのきっかけで思い出すかもしれません。 ※いくつかオタク知識が消されているという事実に気が付きました。また、下手に思い出せば首輪を爆破される可能性があると考えています。 ※かがみ達が自分を知らない可能性に気が付きましたが、彼女達も変わらない友達だと考える事にしました。 ※ルルーシュの世界に関する情報を知りました。 ※この場所には様々なアニメやマンガ等に出てくる様な世界の人物や物が集まっていると考えています。 ※地図に載っていない施設が存在する事を確信しました。 ※PT事件の概要をリインから聞きました。 ※自分に割り振られた調査エリアを調べ終えました。何かを見つけたか否かは後続の書き手さんにお任せします。 ※アーカードとエネル(共に名前は知らない)、浅倉、キングを警戒しています(特にアーカードには二度と会いたくないと思っています)。 ※ヴィヴィオ及びクラールヴィントからヴィヴィオとの合流までの経緯を聞きました。矢車(名前は知らない)と天道についての評価は保留にしています。 【リインフォースⅡ:思考】 基本:スバル達と協力し、この殺し合いから脱出する。 1.周辺を警戒しいざとなったらすぐに対応する。 2.はやて(StS)や他の世界の守護騎士達と合流したい。殺し合いに乗っているならそれを止める。 【備考】 ※自分の力が制限されている事に気付きました。 ※ヴィヴィオ及びクラールヴィントからヴィヴィオとの合流までの経緯を聞きました。 【チーム:黒の騎士団】 【共通思考】 基本:このゲームから脱出する。 1.首輪解除の手段とハイパーゼクターを使用するためのベルトを探す。 2.首輪を機動六課、地上本部、スカリエッティのアジト等で解析する。 3.それぞれの仲間と合流する。 4.ゆりかごの起動を阻止しヴィヴィオを救出する。 【備考】 ※それぞれが違う世界の出身であると気付きました。また異なる時間軸から連れて来られている可能性に気付いています。 ※デュエルモンスターズのカードが武器として扱える事に気付きました。 ※デュエルアカデミアにて情報交換を行いました。内容は守りたいもの本文参照。 ※「月村すずかの友人」からのメールを読みました。送り主はフェイトかはやてのどちらかだと思っています。 ※チーム内で、以下の共通見解が生まれました。 要救助者:万丈目、明日香、つかさ、ヴィヴィオ/(万丈目は注意の必要あり) 合流すべき戦力:なのは、フェイト、はやて、キャロ、ヴィータ、シャマル、ユーノ、クアットロ、アンジール、ルーテシア、C.C./(フェイト、はやて、キャロ、ヴィータ、シャマル、クアットロ、アンジール、ルーテシアには注意の必要あり) 危険人物:赤いコートとサングラスの男(=アーカード)、金髪で右腕が腐った男(=ナイブズ)、炎の巨人を操る参加者(=ルーテシアorキャロ?)、ヴァッシュ、かがみ、半裸の男(=エネル)、浅倉 判断保留:キング、天道、スーツの男(=矢車) 以上の見解がそれぞれの名簿(スバル、こなた)に各々が分かるような形で書き込まれています。 ※アニメイトを襲いヴィヴィオを浚った人物がゆりかごを起動させようとしていると考えています。 ◆ ◇ ◆ ◇ ホテルの屋上に降り立った天使は正面の地平線に落ちる陽光を見詰め、ボンヤリと思考を垂れ流していた。 目を覚ました時、既にあの剣士の姿はなかった。 その身体から落下したのであろう血液が転々と、剣士へと続く道を形成していたが、追い掛ける気にはなれなかった。 彼と自分とは相容れぬ道を選択していた。出会ったその時は互いの武器を、信念を掲げて戦わねばならない。 だが、彼はあの地獄の時から自分を解放してくれた恩人だ。 戦わない、という訳ではない。ただあの時、あの一回だけは見逃したかった。 礼という訳ではない、借りを返したという訳ではない、ただあの瞬間だけは彼と戦闘する事は出来なかった。 だから、彼と正反対の方角へと羽を広げた。 眼前を埋め尽くす大量の青色へと、飛んだ。 「次に会えたら、今度こそ止めるよ。俺の全身全霊を賭けて」 天使―――いや、ヴァッシュ・ザ・スタンピードは大きな決意を紡ぎ出しながら、心中で片翼の剣士へと感謝の念を飛ばす。 一度目の離別の際、彼の元へと置いていった拳銃を、自身の力が宿る右手と―――先程の戦闘で斬り落とされた筈の『左手』とで握り締めながら、ヴァッシュは殺し合いの会場を見下ろしていた。 「本当に、ありがとう……!」 覚醒時その『左腕』は、大量の血液と砂埃にまみれながらヴァッシュの傍らにて転がっていた。 ヴァッシュはそのみすぼらしい姿を見詰め、数秒の逡巡の後に拾い上げた。 そして、プラントの力を使用して、復元。 自身の左肩の断面と転がる左腕とを繋ぎ合わせ、プラントの『持ってくる力』を利用して無理矢理に。 あれ程別れたいと思っていた全ての根源を、片翼の剣士と自身とが死力を尽くして切り離した全ての根源を、ヴァッシュは自らの意志で復活させた。 アンジールが見れば、気が狂ったかと思われても仕方のない所業。 だが、それでもヴァッシュは行使した。 それが、それこそが彼女の望んだ道だと知っていたから。 誰もが誰も、共存できる世界。それこそが彼女の望んだ未来だから―――ヴァッシュは試みた。 奴と、人間を憎みその存在を許容しない男との、共存を。 死して尚、人間を憎悪するその存在との共存を。 その結果は―――今現在、彼が体現している。 「クロノ、なのは……フェイト、そしてお前の分まで……」 赤やけの空を前に人間台風は復活を遂げる。 両の腕には白銀の拳銃を、 右の腕には全てを消し去る天使の砲台を、 左の腕には全てを切り裂く天使の砲台を、 三つの銃を抱きながら、彼等はいた。 一人分のひだまりの中に―――彼等はいた。 【1日目 夕方】 【現在地 F-9 ホテル・アグスタ・屋上】 【ヴァッシュ・ザ・スタンピード@リリカルTRIGUNA's】 【状態】疲労(大)、融合、黒髪化八割 【装備】ダンテの赤コート@魔法少女リリカルなのはStylish 、アイボリー(6/10)@Devil never strikers 【道具】なし 【思考】 基本:殺し合いを止める。誰も殺さないし殺させない。 0.さて、どうしようか 1.殺し合いを止めつつ、仲間を探す。新庄と再会したい 2.首輪の解除方法を探す。 3.アーカード、ティアナを警戒。 4.アンジールと再び出会ったら…… 【備考】 ※第八話終了後からの参戦です。 ※制限に気付いていません。 ※なのは達が別世界から連れて来られている事を知りません。 ※ティアナの事を吸血鬼だと思っています。 ※ナイブズの記憶を把握しました。またジュライの記憶も取り戻しました。 ※エリアの端と端が繋がっている事に気が付いていません。 ※暴走現象は止まりました Back ひとつ分の陽だまりに ふたつはちょっと入れない 時系列順で読む Next 貴重な貴重なサービスシーン・なのはロワ出張編 投下順で読む Next 貴重な貴重なサービスシーン・なのはロワ出張編 アンジール・ヒューレー Next Aの残光/強襲ソルジャー ヴァッシュ・ザ・スタンピード Next 波紋 - a divine messenger of the two. スバル・ナカジマ Next 突っ走る女 泉こなた Next 突っ走る女
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/1247.html
魔法少女リリカルBASARAStS ~その地に降り立つは戦国の鉄の城~ 第八話「戦国最強がいなくなった世界/戦国最強が戻ってきた世界」 「・・・・」 すっかりただの瓦礫となった機動六課本部。 その部隊長室だった場所に佇む部隊長、八神はやて。その手にはかつて本多忠勝が背負っていた紋章。 しかしその紋章もボロボロになる。肝心の本多忠勝は、死亡者扱い。はやてはやりきれない気持ちでいっぱいだった。 誰もいないその場所で、紋章を抱いて崩れ落ちるはやて。 「・・・守るって・・守るって約束したはずやのに・・・・したはずやのに・・・守れん・・かった・・・!!」 紋章に雫が一つ、それは優しき夜天の王の目から流れ落ちた、涙。 「さすがの俺様でも、こういうときは見守るに限るね・・・。」 元親に連れられ六課に来た佐助は物陰に隠れ、ポツリと呟く。 「で・・貴方達は忠勝さんの・・知り合いなんですか・・・。」 フェイトは一人の男と話をしている。が、非常に話しにくそうにしている。 理由は、その男が大きすぎるのだ。その身長は軽く行っている。 「うむ・・・。しかし本多が・・死んだだと?」 その男、豊臣秀吉はまだ疑っていた。 戦国最強であるはずの男が死んだ。にわかには信じられないことだ。 フェイトは目を逸らし、語るのも辛そうにしている。 「えぇ・・・。ガジェットドローンの大群にたった一人で挑んで・・・。」 「すまない、古傷を抉ってしまったようだな。」 「いいんです・・事実ですから・・それより、私と一緒に来てください。」 「応。」 秀吉、フェイトは長い廊下だった場所を、歩き始める。 「えっと・・じゃあ元親さんは忠勝さんの知り合い・・で、鬼ヶ島の鬼・・と?」 「見かけは人間に見えますが・・。」 「オイオイ、鬼ヶ島の鬼は通り名だ。意味を鵜呑みにするんじゃねぇよ。」 エリオ、キャロと話しているのは長曾我部元親。 彼はなのはに言われ、エリオとキャロをお見舞いに行って緊張をほぐしてきてほしいと言われここに来た。 ちなみに元親、子供は苦手だ。 (ったく・・・なんで俺がガキの相手を・・第一今落ち着くべきはアンタの方だろうが・・・) 心の中でぼやくが彼は気づいていない。 元親のおかげで少し、二人の表情は何か吹っ切れたような感じをしていた。 病院の一室に、風魔小太郎とスバルはいた。 だが、どちらも話そうとはしない。むしろ、この静寂が気持ちよかった。 スバルは風魔がお見舞いに来てくれたのでなんとか元気な姿を見せようと振舞った。 風魔のほうはスバルの言葉に耳を傾け、窓を開けて風景を眺めていた。 で、自分も何があるんだろうと思い、風景を眺めている。わずかに吹くそよ風、ゆれる木々、舞う葉。 「ねぇ、風魔さ・・・あれ?」 横を見ると、誰もいなかった。 「スバルー、入るわよー。」 同時に入ってきたティアナ。ティアナはスバルの顔を見るとちょっと意外そうだった。 「どうしたの?なんか、顔色、よくなってるわよ?」 「え・・ええ?そうかなぁ・・・?」 きっとそれは、風魔独自の励まし方・・・なのかもしれない。 結構無理やりだが。 「・・・かつ・・・ただ・・・・ただ・・・!」 どこからか自分を呼ぶ声が聞こえる。その声は懐かしく、聞きなれたもの。 声はだんだんと大きくなり、自分の視界も明るくなる。 「忠勝!!おぉ、起きたか忠勝!!はっはー!!」 大喜びで叫ぶ黄色い鎧を着けた男。それは自分もよく知ってる男であった。 主、徳川家康。主がここにいるということは、自分は戦国時代に戻ってきたのか? そんなことはありえない。自分は今敵と戦っている。早く起きて殲滅せねば!!ヴィヴィオが連れ去られる前に!! 「おわっ!?どうした忠勝!?」 現実は無情であった。見慣れた木造の壁。・・・本当に戻ってきたみたいだ。 何故だろう、いい気分が全然しない。 よく見ると体は上半身右半分、そして頭だけだ。喜ぶ主には悪いが、今自分はとても虫の居所が悪い。 だが、主は 「落ち着け!今この町一番の技師を呼んできて新しい体と武器を作ってやる!!そしたらもう一度オメェが行ってきた世界で、守りたいものを守るのだ!!」 やれやれ、主、私の頭の中を探りましたね。 「ただし!!条件がある!」 条件?何のことだろうか。主は満足げに三つの宝石を取り出した。 黒、金、桃の三つの宝石。 「まだ実験段階だが・・・持っていけ。きっとあっちでオメェの役に立つはずだ!」 新しい兵器ですか。わかりました。その条件、飲みましょう。しかし、早くしてくれると・・・ありがたい。 早く・・・ヴィヴィオを助けにいかねば!! その頃ミッドチルダでは機動してしまった聖王のゆりかごを止めるために戦艦、アースラに六課メンバーとHERO、つまり 風魔小太郎達が集められていた。途中で映し出されたニュースの映像、スカリエッティの犯行声明だった。 そこに映るは助けを呼ぶヴィヴィオ。ゆりかごの船首に仁王立ちする第六天魔王。 ガジェットドローンの大群。・・・そして、量産された戦国最強、本多忠勝。 アースラメンバーはその映像に驚愕しながらも、それぞれの戦場に赴く。 戻る 目次へ 次へ
https://w.atwiki.jp/nanoharow/
リリカルなのはクロス作品バトルロワイアルにようこそ 現在進行中のスレッドをご覧になる皆様へ リリカルなのはクロス作品バトルロワイアルの進行中のスレッドの閲覧には各所で公開されている2ch専用ブラウザの使用を強くお勧めします! 各種専用ブラウザの入手はこちらから! ■各種メニューはこちら wiki編集者へ ウィキはみんなで気軽にホームページ編集できるツールです。 このサイトのページは自由に編集することができます。 みんなで協力してまとめサイトを作り上げていきましょう。 @wiki仕様 1ページ/ファイル辺りの容量は以下のようになっています(大作SSはページ分割しなければいけない場合があるので注意)。 ウィキモードの1ページにつき・・・・・・50? K Bytes テキストモードの1ページにつき・・・・200 K Bytes ワープロモードの1ページにつき・・・・200 K Bytes アップロード 1ファイルにつき・・・・・・・・1 M Bytes まずはこちらをご覧ください。 @wikiの基本操作 用途別のオススメ機能紹介 @wikiの設定/管理 その他にもいろいろな機能満載!! @wikiプラグイン @wiki便利ツール @wiki構文 分からないことは? @wiki ご利用ガイド よくある質問 @wikiへお問い合わせ 等をご活用ください
https://w.atwiki.jp/nanoharow/pages/604.html
Round ZERO ~KING SILENT ◆HlLdWe.oBM 創造の後には破壊があり、破壊の後には創造がある。 つまり創造は破壊から生まれるのだ。 だから一面瓦礫の山と化したこのE-5のエリアから新たな芽が息吹くのは当然の流れかもしれない。 そう静かで暗い芽が――。 ▼ ▼ ▼ 俺は負けたのか? 今まで『欠陥品』や『初期不良品』と歯牙にもかけてこなかった奴に。 同じ遺伝子プールから生まれた存在ではあるが、唯一アリスの意思を宿していない奴に。 俺は負けたのか? いや、正確には『負けていた』が正しいか。 本来なら身体を刃で地面に刺し貫かれた時点で俺は死んでいる。 あの時レッドが“グリフォン”を発動させれば超振動でARMSの心臓たるコアは破壊されていたのかもしれない。 だがそうはならなかった。 おそらく制限によって“グリフォン”の威力がコアまで届かない可能性を危惧したんだろう。 だからこそ確実に止めが刺せるように左手に持ったベガルタを捨てて、己の刃を振り翳したのだ。 あるいは自らの手で直接最期となる感触を得たかったのかもしれない。 もう死んでしまった今となっては確かめる術はないが。 確かにあの時のキース・レッドの判断に誤りはなかった。 だがそれはこの特殊な場所だからであって、ここ以外なら死んでいたのは俺の方だ。 今も俺が生きているのは単に運が良かっただけ。 だがそんな考えは慰めでしかない。 俺はあいつに負けたんだ。 そして次はもうありえない。 あいつは俺が殺したのだから。 そうだ。 勝負に負けた俺が勝負に勝ったあいつを殺したんだ。 その事実はもうどんな事をしても拭い去る事はできない。 ああ、それにしてもここは静かだ……。 ▼ ▼ ▼ 瓦礫の山。 八神はやては目が覚めるとそこにいた。 不思議な事になぜ自分がここにいるのか記憶がない。 自分がどこにいるのか把握しようにも辺り一面360°全て瓦礫ばかり。 これでは自分がどこにいるのか分かるはずがない。 しかしそんな状況に置かれているのになんとなく受け入れている自分がいた。 「ん?」 ふと右手で何かをつかんでいる感触があった。 今まで気が付いていなかったのは不思議だが、はやては別に何とも思わなかった。 それはここがどこだかおぼろげながら理解しつつあるという事もあった だがなにより右手にあったものが些細な疑問を全て吹き飛ばしたからだ。 「ああ、そうか……ついに、ついに、取り戻せたんや。みんなを……」 いつのまにかはやての周りには5つの人影があった。 「主はやて……」 剣の騎士、烈火の将シグナムが。 「はやて……」 鉄槌の騎士、紅の鉄騎ヴィータが。 「はやてちゃん……」 湖の騎士、風の癒し手シャマルが。 「主はやて……」 盾の守護獣、蒼き狼ザフィーラが。 そして――。 「主はやて……」 幸運の追い風、祝福のエール――リインフォースが。 「みんな……」 はやてが取り戻したいと強く願い続けてきた家族がそこにいた。 「はやてちゃん……」 そしてはやての隣には新しい家族リインフォースⅡの姿もあった。 「ああ、これでもうみんな一緒やね……みんな、みんな一緒や! シグナムも、ヴィータも、シャマルも、ザフィーラも、そして――リインフォース、もちろんちっこいリインも!」 それははやてが望んでいた光景だった。 誰一人欠ける事なくみんな一緒にここにいるという願い。 それが今この瞬間目の前で実現している。 それは本当ならこの上もないほど嬉しい出来事――のはずだった。 「でもな……」 だがはやての心には嬉しさ以上の感情が渦巻いていた。 「なんで……」 それは温かいものではなく、もっと暗いもの。 「なんでみんなそんな目で私を見るんや?」 はやては自分に向けられた視線の意味を悟って愕然としていた。 すぐにこれは嘘だと自分が置かれた状況を否定しようとした。 だがそれは決して勘違いではない。 「シグナム? ヴィータ? シャマル? ザフィーラ? なあ、そんな顔やなくて、私は笑ってほしいんや……」 シグナムも、ヴィータも、シャマルも、ザフィーラも、そして――。 「リイン! なあ、笑ってや!」 ――二人のリインフォースもまたはやての笑いかける事はなかった。 「私、頑張ったのに、それなのに、なんで? なんで? そんな目で私を見るんやああああああああああ!!!!!」 はやては分からなかった。 なぜみんながそんな悲しそうな表情を浮かべているのか。 いや本当は分かっていた。 ただ認めたくなかっただけ。 その事実を認めたくないばかりにはやては泣き叫び、そして――。 『はやて! はやて! はやて!』 ――静かな悪夢は終わりを迎えた。 ▼ ▼ ▼ プレシア・テスタロッサの手によって幕を上げたバトル・ロワイアル、通称『デスゲーム』。 その会場であるアルハザードの某所に作られた特別な9km×9kmの会場の中央に位置するE-5エリア。 その位置ゆえに序盤から様々な参加者がそのエリアを訪れ、時には手を組み、時には戦い、そして今はもうすっかり廃墟と化していた。 セフィロスの『スーパーノヴァ』による隕石群。 憑神刀(マハ)の持ち主によって幾度も放たれた『妖艶なる紅旋風』による竜巻。 二つのロストロギアの力を借りて天上院明日香が行使した『星を破壊する最強の光』にも匹敵する砲撃。 それ以外にも短時間でエリアに与えられたダメージは計り知れない。 これで無事であるエリアなどあるはずがない。 その跡地の中でヴィータは必死にはやてを抱え起こして名前を呼んでいた。 「はやて! はやて! はやて!」 金居からミラーワールドについての事情を聞いている最中に発生した大規模な魔力の衝突。 それによる衝撃波は辛うじて残っていた地上本部を倒壊させるほどのものだった。 幸いヴィータがいた場所までは若干距離があったのでシールドを展開する事で難を逃れる事が出来た。 そして爆発の中心に向かったところ、瓦礫の中に倒れているはやてを見つけて今に至る。 「おい、ヴィータ。あんまり大声出すなよ。まだ近くにセフィロスやアーカードがいるかもしれなないし、それに金居も――」 「うるせえ。今はそんな事よりも――」 その声を遮るかのようにデスゲーム開始から18時間が経過した事を知らせる放送が流れた。 ▼ ▼ ▼ アーカードは静かに放送に耳を傾けていた。 今回の死者は19人。 前回の倍以上しかも前回の放送まで生き残っていた参加者の半数が死んだ事になる。 だがアーカードはあまり関心がなかった。 今のアーカードの目的はプレシア・テスタロッサの抹殺。 最終的に主インテグラのラストオーダーを果たせるなら誰が死のうと関係なかった。 それゆえに円卓会議の一員であるペンウッドが死んでいた事に別に興味はなかった。 だが例外はある。 (……セフィロス、貴様は別だ) アーカードを後一歩まで追い詰めた化け物。 そのセフィロスもまた死んだ。 その瞬間は予想外に呆気ないものだった。 かなりのダメージを負っていたのではっきりとは分からないが、正面から撃たれて死んだらしい。 誰が殺したのか少し興味はあるが、目星は付いている。 (おそらくあの女、はやてと呼ばれていたな) あの時点で同じエリア内で戦闘を目撃していた人物は3人。 金居とヴィータとはやて。 そのうちヴィータとは背格好が合わない上に銃殺という手段を取るとは思えない。 そうなると金居とはやての二択だが、アーカードは戦闘中の気配からはやてだと半ば確信していた。 それは殺気。 ヴィータがアーカードに対して並々ならぬ殺気に似た物を送っていたとの同様にはやてはセフィロスに対して同じものを送っていた。 むしろこっちは純粋に殺気と呼べるほどにどす黒い視線だった。 もしも予想が正しいなら生かすつもりはない。 先程の爆発で建物の崩壊に巻き込まれて傷を負ったが、問題はないだろう。 (どちらにせよ、直接会えば分かるか) そして吸血鬼は静かに姿を現した。 ▼ ▼ ▼ アレックスは悩んでいた。 参加者にとっては重要な放送も耳に入らないまま悩み続けていた。 これから自分は何をするべきかと。 もちろん六課の仲間と合流してデスゲームを終わらせるべきだ。 だがキース・レッドに敗北した事実はアレックスの身体をこの場に縛りつけていた。 そんな時、誰かが近付いてきた。 「おい、生きているのか?」 今のアレックスはARMSの力で再生中ではあるが、その事を知らない人から見れば死人も同然の状態だ。 だからそういう質問がされるのは半ば自然な流れだ。 「ああ……なんとかな……」 とりあえずそれだけ答えた。 正直なところ今は誰かと話す気分ではない。 それにこうして質問してくるという事は少なくとも相手は殺し合いに乗っていない。 もしも殺し合いに乗っていれば何も聞かずに殺しにくるはずだから。 「再生力が高いのか。ところで貴様は殺し合いに乗っているのか?」 ここがデスゲームの場である以上、当然とも言える質問だ。 「いや、俺は殺し合いには乗っていない」 以前なら本能のままに闘争を繰り広げていたのかもしれない。 だがアレックスは一度死んだ時にその呪縛から解き放たれている。 (そうだ、俺は決めたはずだ。運命に縛られず自らの意志で闘争を行うと! だから――) 「――それなら用はない」 真上から振り下ろされる断罪の鉄槌。 それがアレックスの目に映った最期の光景だった。 【アレックス@ARMSクロス『シルバー』 死亡確認】 ▼ ▼ ▼ ヴィータにとって先程の放送は人数の割に衝撃は大きくなかった。 19人の死者のうちヴィータと関わりがあったのはシャマル、ゼスト、セフィロス、フェイト、ルーテシアの5人。 だがシャマルは事前にはやてからその死を聞かされていたから改めてその死を悼むに止まった。 フェイトに関しては敵対している間柄とはいえ信用できそうな人物ではあったが、そこまで深い関係でもないので上に同じ。 ゼストとルーテシアもアギトの大切な人ではあるが、直接会った事がないのでまた上に同じ。 そのアギトだが今は二人の死によるショックからかデイパックの中に籠っている。 別人の可能性があるとはいえ大切な存在を一度に失ったのだから無理もない。 だがセフィロスだけはその衝撃は大きかった。 ヴィータから見てセフィロスは別次元の強さを誇っていた。 最初ははやてを死に追いやったと思い込んで戦ったが、アギトから事情を聞くに及んで最初ほど敵視できなくなっていた。 むしろ僅かではあるが共感できるものがあった。 最後に見たのは同じく規格外の化け物であるアーカードと戦っている最中だった。 そのアーカードが生きている事から戦いに敗れて死んだのかもしれない。 (セフィロス、結局お前とは――) 「ほう、また会ったな」 「――ア、アーカード、てめえぇぇぇえええええ!!!!!」 セフィロスの最期に静かに想いを馳せていた時に聞こえてきた声。 その声をヴィータが聞き逃すはずがない。 最凶の吸血鬼アーカードの声を。 「やっぱり生きていたのかよ……」 「降りかかる火の粉は払わないといけないな」 ヴィータはすぐさま真紅のバリアジャケットを身に纏って槍を構える。 先程の戦闘の傷がまだ癒えていないのかアーカードの身体には真新しい傷がいくつも刻まれていた。 何かにうなされていたようなので治療のために核鉄をはやてに持たせているが、まだ目覚めていない。 どうせ気絶したはやてを連れて逃げ切れるとは思えないので決死の覚悟で迎え討つつもりだ。 それに今ならアーカードの傷も癒えていないので勝機の芽はあるのかもしれない。 こうして廃墟の真っ只中で静かに死闘の火蓋は切られた。 【1日目 夜】 【現在地 E-5 崩壊した市街地】 【ヴィータ@魔法少女リリカルなのはA's】 【状態】健康、奇襲に対する危機感(大)、アーカードへの恐怖 【装備】ゼストの槍@魔法少女リリカルなのはStrikerS 【道具】支給品一式、デジヴァイスic@デジモン・ザ・リリカルS&F、アギト@魔法少女リリカルなのはStrikerS、セフィロスのデイパック(支給品一式) 【思考】 基本:はやての元へ帰る。脱出するために当面ははやて(StS)と協力する。 1.アーカードは殺す!!! 2.はやて(StS)は様子見、当分の間は同行するが不審点があれば戦闘も辞さない。 3.ヴィヴィオとミライを探す。 4.アーカード、アンジール、紫髪の少女(かがみ)は殺す。 5.グラーフアイゼンはどこにあるんだ……? 6.そういえば金居はどこだ? 【備考】 ※ヘルメスドライブの使用者として登録されています。 ※今のところ信用できるのはミライ、なのは、ユーノのみ。 ※はやて(StS)、甲虫の怪人(キング)、アーカード、アレックス、紫髪の少女(かがみ)、アンジールを警戒しています。 ※参加者が異なる時間軸や世界から来ている事を把握しています。 【アギト@魔法少女リリカルなのはStrikerS】の簡易状態表。 【思考】 基本:??? 1.旦那……ルールー……。 【備考】 ※参加者が異なる時間軸や世界から来ている事を把握しています。 ※デイパックの中から観察していたのでヴィータと遭遇する前のセフィロスをある程度知っています。 ※ヴィータがはやてを『偽者』とする事に否定的です。 【アーカード@NANOSING】 【状態】疲労(中)、全身に裂傷(中) 【装備】正宗@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使 【道具】支給品一式、拡声器@現実、首輪(アグモン)、ヘルメスドライブの説明書 【思考】 基本:インテグラの命令(オーダー)に従い、プレシアを打倒する。 1.邪魔をするヴィータを殺した上ではやてを……。 2.再度プレシアの下僕を誘き寄せるために、工場に向かい首輪を解除する。 3.積極的に殺し合いに乗っている暇はないが、向かってくる敵には容赦しない 4.首輪解除の技能者を探してみる? 5.アンデルセンを殺した参加者を殺す。 【備考】 ※スバルやヴィータが自分の知る者とは別人だと気付いています。 ※第一回放送を聞き逃しました。 ※デスゲーム運行にはプレシア以外の協力者ないし部下がいると考えています。 ※首輪解除時の主催の対応は「刺客による排除」だと考えています。 ▼ ▼ ▼ (さて、どうしよっか? さすがに手負いとはいえヴィータだけでアーカードを倒せるとは思えん。 私が加勢できたらいいんやけど、まだ回復までには時間がかかりそうやな) はやては今の状況を努めて冷静に見ようとした。 実は少し前から意識はあったが、すぐにアーカードが来たので様子を見る事にしたのだ。 本来ならアーカードとは戦わずに逃げたい。 だが今のアーカードは万全とは言えない状態だ。 もしかしたらヴィータと組めば倒せるかもしれない。 (でもまずはヴィータに時間を稼いでもらうしかないか……) 不幸中の幸いか、明日香が魔力の源にしていたジュエルシードはその内包する力を使い切ったせいか何の反応も示さないようだ。 ジュエルシードの力も加わっていたと知った時は使うのは危険だと思ったが、これなら夜天の書も問題なく使える。 だが備えあれば憂いなし。 もし可能ならば明日香の近くに落ちている道具で使えそうなものがあれば活用したい。 はやては静かに自分が動く時を持ち続けるのだった。 【1日目 夜】 【現在地:E-5 崩壊した市街地】 【八神はやて(StS)@魔法少女リリカルなのはFINAL WARS】 【状態】疲労(大)、魔力消費(大)、胸に裂傷(比較的浅め、既に止血済)、肋骨数本骨折、内臓にダメージ(中)、スマートブレイン社への興味 【装備】コルト・ガバメント(5/7)@魔法少女リリカルなのは 闇の王女、憑神刀(マハ)@.hack//Lightning、夜天の書@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ジュエルシード@魔法少女リリカルなのは、ヘルメスドライブ(破損自己修復中で使用不可/核鉄状態)@なのは×錬金 【道具】支給品一式×2、トライアクセラー@仮面ライダークウガA’s ~おかえり~、S W M500(5/5)@ゲッターロボ昴、首輪(セフィロス) 【思考】 基本:プレシアの持っている技術を手に入れる。 1.様子見。 2.手に入れた駒(ヴィータ等)は切り捨てるまでは二度と手放さない。 3.キング、クアットロの危険性を伝え彼等を排除する。自分が再会したならば確実に殺す。 4.金居のことは警戒。 5.以上の道のりを邪魔する者は排除する。 6.メールの返信をそろそろ確かめたいが…… 7.自分の世界のリインがいるなら彼女を探したい……が、正直この場にいない方が良い。 【備考】 ※プレシアの持つ技術が時間と平行世界に干渉できるものだと考えています。 ※ヴィータ達守護騎士に心の底から優しくするのは自分の本当の家族に対する裏切りだと思っています。 ※キングはプレシアから殺し合いを促進させる役割を与えられていると考えています(同時に携帯にも何かあると思っています)。 ※自分の知り合いの殆どは違う世界から呼び出されていると考えています。 ※放送でのアリサ復活は嘘だと判断しました(現状プレシアに蘇生させる力はないと考えています)。 ※エネルは海楼石を恐れていると思っています。 ※放送の御褒美に釣られて殺し合いに乗った参加者を説得するつもりは全くありません。 ※この殺し合いにはタイムリミットが存在し恐らく48時間程度だと考えています(もっと短い可能性も考えている)。 ※「皆の知る別の世界の八神はやてなら」を行動基準にするつもりです。その為なら外見だけでも守護騎士に優しくするつもりです。 ▼ ▼ ▼ 金居がアレックスを殺した理由は至極単純で簡単なものだった。 つまりこのまま生かしておけば邪魔になるからだ。 高い回復能力を持つ主催者に反抗する参加者。 しかもその戦闘能力が高いのはミラーワールド見ていたので既に知っていた。 そのような参加者を放っておけば障害になる事は確実だった。 だから満足に動けないこの千載一遇の機会を逃す手はなかった。 殺害の手口は首から胸にかけての部分にイカリクラッシャーを叩きつけて潰すというもの。 生半可な方法では再生されてしまうと考えた結果、絶対的な致死を司る首輪周辺を破壊することにした。 そして予想通りもう再生する事はなかった。 金居がアレックスを発見したのはヴィータが爆心地へ向かっている最中。 それまではミラーワールドのことを大まかに話している最中だった。 因みに話した内容はあの時点で以下の二つ。 ミラーワールドに参加者を引きずり込んだのは浅倉威。 確認できただけで引きずり込まれた参加者は9人(金居、キング、相川始、天道総司、柊かがみ、柊つかさ、キース・レッド、キース・レッドに似ている男、黒服の少年) そこまで話したところであの衝撃波が襲ってきた。 まだアンデッドの姿には戻れなかったが、逆にヴィータにその姿を見せずに済んで結果オーライだった。 そのヴィータは移動中に遠目ではやての姿を確認したのか、はやてと名を呼びながら一目散に走って行った。 この時金居は無理に急いで行くつもりはなかった。 まだ近くにアーカードがいた場合、離れていた方が何かと都合がいいと考えたからだ。 それから放送があり死者の多さに驚いたが、それだけだった。 ただアーカードが死んでいないと分かって少し警戒心が増したぐらい。 アレックスを見つけたのはそんな時だった。 そして一応殺し合いに乗っているか聞いた上で邪魔になると判断して殺した。 (少し気になったのはボーナスの基準か。前の放送であんな発破をかけたぐらいだから、もしや基準はそこか?) ボーナスとして与えられる道具が何になるか。 第二回放送から第三回放送までに殺した人数。 第三回放送までに殺した人数。 殺した参加者の力量。 果たして選ばれる基準が何に基づいているのか、それはまだ誰にも分からない。 「さて、こいつのデイパックも回収して、あとは……ん?」 それを見つけたのは偶然だった。 地面に走った亀裂。 その周囲には倒壊した地上本部のなれの果て。 つまりは地上本部の地下部分が倒壊の影響で僅かに剥き出しの状態であった。 そしてその亀裂から金居は何かを感じた。 それを確かめるべく近づくと、そこにはある模様が描かれていた。 ちなみに近くに落ちていた看板には次のような説明が書かれていた。 『魔力を込めれば対象者の望んだ場所にワープできます』 【1日目 夜】 【現在地:E-5 地上本部跡地】 【金居@魔法少女リリカルなのは マスカレード】 【状況】健康、ゼロ(キング)への警戒 【装備】なし 【道具】支給品一式、トランプ@なの魂、砂糖1kg×8、USBメモリ@オリジナル、イカリクラッシャー@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER 【思考】 基本:プレシアの殺害。 1.なんだ、これは? 2.基本的に集団内に潜んで参加者を利用or攪乱する。強力な参加者には集団をぶつけて消耗を図る(状況次第では自らも戦う)。 3.利用できるものは利用して、邪魔者は排除する。 4.上手く状況を動かして隙を見てアーカードを殺害する。 5.同行者の隙を見てUSBメモリの内容を確認する。 6.工場に向かい、首輪を解除する手がかりを探す振りをする。 【備考】 ※この戦いにおいてアンデットの死亡=封印だと考えています。 ※殺し合いが難航すればプレシアの介入があり、また首輪が解除できてもその後にプレシアとの戦いがあると考えています。 ※参加者が異なる世界・時間から来ている可能性に気付いています。 ※ジョーカーがインテグラと組んでいた場合、アーカードを止められる可能性があると考えています。 ※変身から最低50分は再変身できない程度に把握しています。 ※プレシアが思考を制限する能力を持っているかもしれないと考えています。 ▼ ▼ ▼ 「あれは転移魔法陣!? なんで地下に移動を!?」 会場の様子を監視していたリニスがそれに驚いたのも無理はない。 確かに魔法陣は屋上にしかなく、その魔法陣も屋上ごと崩れたはず。 それが今は地下に移動している。 まるで元からそこにあったかのように。 元々リニスは今回から採用されたボーナスシステムを使ってどうにか参加者の助けとなる道具を送りたいと思っていた。 だが誰にも気づかれる事なく道具を仕込むのは簡単な事ではない。 案の定ボーナス用の道具が置かれた場所にも何らかの監視システムが設置されていた。 まずはそれをどうにか掻い潜る方法を考えている時に最初のボーナス適用者である金居が現れたのだ。 その際のボーナスの転送から何かヒントが得られないか注意して監視していた時、金居と同様に魔法陣の存在に気付いた。 (いったい何が……) そしてその様子をさらに監視している人物がいる事にリニスは気付く事はなかった。 ▼ ▼ ▼ (あの子は思いもしていないでしょうね。まさか私がこんなに早く休息を終えているなんて) リニスを監視していたのは休息すると言って一度奥に引っ込んだはずのプレシア。 既にその顔には疲労の色はない。 それも当然だろう。 参加者の何人かには一瞬で体力や魔力を回復してくれる道具が配られている。 その配った張本人がそのような便利道具を全て参加者に渡して手元に残していない訳がない。 (でも地上本部が崩れるなんて……少し甘く見すぎていたようね。これからは一層の注意が必要ね) さすがにキース・レッドによる内部破壊、E-5エリア全土に放たれたいくつもの砲撃。 まさか短時間で地上本部にここまで攻撃が集中するとは思わなかった。 キース・レッドが手を出すまで本格的な破壊活動がなかっただけに油断がなかったというのは嘘になる。 (それにしても、まさか万が一に備えて付与しておいた機能が役に立つなんて……そのおかげで『要』は無事……。 ただ、調整のために禁止エリアにせざるを得なかったけど、果たして誰か気づく参加者がいるのかしら。 ふっ、気づいたところで何もできないでしょうけどね。それよりも今は山猫と――) そしてプレシアは別画面に映る二人を見て静かに微笑みを浮かべるのだった。 (――馬鹿ね。ここに辿りつけないとも知らずに……) そこに映っていたのは亡き主の仇を討つために乗りこんできた『風』と『犬』の姿だった。 【全体備考】 ※E-5のアレックスの死体に近くに以下の物が放置されています。 アレックスのデイパック(支給品一式、Lとザフィーラのデイパック(道具①と②)【道具①】支給品一式、首輪探知機(電源が切れたため使用不能)、ガムテープ@オリジナル、ラウズカード(ハートのJ、Q、K)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、レリック(刻印ナンバーⅥ、幻術魔法で花に偽装中)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、首輪(シグナム)、首輪の考察に関するメモ【道具②】支給品一式、ランダム支給品(ザフィーラ:1~3)) Back 破滅へのR/なまえをよんで 時系列順で読む Next 燃える紅 Back 破滅へのR/なまえをよんで 投下順で読む Next 燃える紅 Back D.C. ~ダ・カーポ~ 予兆 ヴィータ Next 燃える紅 Back D.C. ~ダ・カーポ~ 予兆 アーカード Next 燃える紅 Back E-5涙目ってレベルじゃねーぞ!! ~自重してはいけない・なのロワE-5激戦区~(後編) 八神はやて(StS) Next 燃える紅 Back D.C. ~ダ・カーポ~ 予兆 金居 Next 燃える紅 Back E-5涙目ってレベルじゃねーぞ!! ~自重してはいけない・なのロワE-5激戦区~(後編) アレックス GAME OVER Back 第三回放送 プレシア・テスタロッサ Next Ooze Garden(軟泥の庭) Back 第三回放送 リニス Next 暗躍のR/全て遠き理想郷
https://w.atwiki.jp/nanoharow/pages/198.html
Heart of Iron ◆WMc1TGFkQk 「何……な、何だってのよ」 悪い夢でも見てるようだ。それが、この状況(正確には先程起きた事態)を言い表す、現在自分が思いつく最大限の言葉だった。 自分こと柊かがみは、陵桜高校三年C組に通う、極平凡な……ついついお菓子を食べ過ぎて、体重計の上で後悔をする……所謂普通の女の子だ。 それなのに、何故、こんな場所に居るのだろうか? 普段通り、登校し——季節外れの転校生という、友人の喜びそうな(事実友人、泉こなたは喜んでいた)イベントはあったものの——普段通り、下校した。 そうだ。普段通りの筈だったのだ。普段通り就寝した筈だったのだ。 それなのに、何故自分は今、こんな所……どう見ても屋外なんかに、居るのだろうか? しかも、いつの間にか……身に覚えのないデイパックなんかを持って。 「………………これ、夢、よね」 そう口に出すと、自分の発した言葉が、よりいっそう真実味無く聞こえた。 それどころか、まるで遥か及ばない何者かが、自分を追ってきている。そんな風にも錯覚された。 寝る前に、あんな本を読んだからだろうか? 帰宅途中に立ち寄った書店(その一言には甚だしいものだが)で、何気なく購入したライトノベル。内容は……SFで、登場人物の中に壁や天井も歩いて追ってくる執拗な追跡者がいた。 『帰宅途中』……そういえば、それには確か、あの転校生達も同行していた。 『あの転校生達』……なのはと、フェイト。 そうだ。彼女達もあの場にいた。 なのはは自分の知らない金髪の友人“アリサちゃん”と、フェイトは変なボンテージファッションの女“母さん”に……。 「!!」 そこまで記憶を遡ると、同時に、かがみの食道を何かが遡った。 突然込み上がるものに顔を歪め、空気を求めかがみは必死に口を開いた。 息……いや、それよりも熱い何かが、食道を通り、口腔を満たし、唇を伝わり、地面に落ち、水音を立てる。 焼け付くような感覚に、何度も口を開閉すると、同時に湿り気のある音が鳴る。 そこまで経って、漸くかがみは気が付いた。ああ、自分は吐瀉しているのだ、と。 何故か? ……それは考えてはいけない。 何故だ? ……それを思い出してはいけない。 何故、考えてはいけない? 何故、思い出してはいけない? ダメだ。兎に角ダメだ。思い出し—— ——ヒトガシンデイタノダ。 「ううっ!!!」 吐いた。また吐いた。もう一度吐いた。 思い返してしまった光景を否定するように、何度なく吐き戻した。 しかし、脳は……記憶はかがみを責め立てる。 人が死んでいた……殺されたのだ、これは紛れもない現実だ、と。 「いや、いや、イヤァァァァァア!!! こなた、こなた、こなた————ッ!!!」 思い付いた人間……親しい友人の名を呼ぶ、必死に叫ぶが、それに応えは無い。 暗闇に、柊かがみの絶叫が響いた。 ◇ ◆ ◇ そこから少し離れた場所に、少年、エリオ・モンディアルは居た。 「……ッ! なんて酷いことを……ッ!」 抱える感情は、怒り。紛れもない憤怒そのものだった。 自分はデジタルワールドに居た。キャロとは離れ離れ、その先でユーノと出会い、炎の街へ向かった……それが何故こんな場所に。 通常ならばそう考えるであろう思考を弾き飛ばす、それほどの心の炎だった。 許せない。許せるわけがない。 目の前であんな行為を行われて、冷静で居られるほどにエリオは非情な存在ではなかった。 怒りで固める拳から骨の軋む音が聞こえようと、エリオの憤激は止む事が無い。 握りしめた爪が肉に食い込み、薄紅の曲線を付ける。そのまま続けばやがて真紅になるであろうが、それは一先ず中断された。 女の悲鳴に、よって。 反射的に飛び出していた。走ると揺れる背中のデイパックが気にはなるが、今は構ってなどいられない。 自分に出来る事があれば……いや、例え自分が及ばなかったとしても、誰かには及ばせはしない——行くしかない! エリオ・モンディアルはそういう少年……騎士、なのだ。 程なくして、エリオはその音源にたどり着いた。 声の主であろう少女、柊かがみ(エリオは名を知らない)は吐瀉物にまみれ、その場にうずくまっていた。 恐慌状態、というものだろうとエリオは判断。すぐさま声を掛けるか思案の後、話しかける事にした。 「あの……」 「ひ……ッ!」 恐怖と急迫が混じり合った、半ば反射的じみたスピードでかがみは頭を起こした。 暗闇に浮かぶ街灯の薄明かりが、かがみのその目に映る光が紛れもない恐れのそれであると、エリオに伝える。 少女は自分を恐れている、そう速断を下す。 無理もない。あの場で行われた、敬愛する女性が「母」と呼んだ女が行った行動は、異常や異端と呼ばれるそれなのだ。 エリオは多少鍛えがあった。覚悟があった。それでも恐ろしかった。耐え難いものだった。 しかし目の前の人はどうだろうか。鍛えている風にも見えない。極めて一般人然としている……事実、一般人だろう。 そんな人間が、凶行(アレ)に耐えられるものなのか。 答えは否だ。耐えられる筈がない。 恐らくは嘔吐もそれが原因だ——エリオは直観する。 ならば先ずは落ち着かせなくては——エリオは決断する。 「あの……」 「ひぃ……ヤ」 何とかコンタクトを取ろうと一歩を踏み出したエリオだったが、それと同時にかがみの顔の恐色が増した。 「ぼ、僕は……別に怪しいものではありません!」 何とかしなくては、そう思っての一言だったが……直後、エリオは理解し、後悔する。 それは、如何なる人間が発せようとも、瞬く間に怪しい人物と思わせてしまう、まさしく魔法の言葉なのだ、と。 「ひッ……や、やだ……こないで……ッ!!」 「違うんです! 僕は……」 「イヤ……こないで……こないで……ッ!」 服が、靴が、手が、吐露した物体にまみれようとも、柊かがみは後退を止めない。 襲いかかる恐怖という名の怪物から、手足に纏わりつく「シ」という名の触手から、一心不乱に自分……柊かがみという名の生命を遠ざける。 しかし、かがみの願いに反して、恐怖状態の筋肉はなかなかそれを実行しない。 カタカタと余計な緊張をして、後ろへちっとも戻ろうとせず、挙げ句、デイパックの中身を撒いてしまう。 零れ落ち音を立てた二つの直方体形の塊。 『それ』が視界に入るや否や、今までとは打って変わった素早い動きで手に取り、かがみは目の前の少年へと突き出した。 黒き直方体形の塊……即ち、銃を。 「こ……こないで……ッ! お、お願い……だから……ッ」 「クッ……」 エリオは歯噛みする。目の前の女性が手にしたのは、御禁制の質量兵器——銃。対する自分は何もない。 せめてデバイス——バリアジャケットさえ展開できれば……。そう思っても、現実自分の手には何もない。 だが、何もないからと言って、この女性を見捨てるのか? こんな場所に、怯える女性を一人、置き去りにするのか? ——違う! 「僕は……あなたを放っては置けません! こんな場所にあなたを一人、置いては行けません!」 故に、口にする。自分は関係なくは、ないのだ、と。 「え……」 「だからッ!」 エリオが一歩を踏み出した。 「僕と、話を」 そこで、エリオの言葉はかき消された。一発の銃声によって。 撃つつもりなどなかった。柊かがみは銃の実物なんて見た事はないし、ましてや手に取った事などない。 ならば、人を撃った事なんて決して有り得ない。 ただ、それを握っていれば少しでも恐怖が遠ざかってくれる『かもしれない』と思って、必死に銃を掴んでいた。 だから、撃つつもりなんてなかった。少年が自分に近寄ったことに驚いて、驚いて……、 銃を握り/引き金にかかった指を——しめた/引いた。 ——ア……ア………… 崩れ落ちた少年の体。流れ出る体液。 ——アア……アアア…… 街灯の冷ややかな照明がそれが赤い——血であると証明する。 ——アア……アアアア………アアアア 液面に反射した姿を見て、柊かがみは初めて自分が叫んでいるのだ——この声は自分が出しているのだ、と認識した。 ◇ ◆ ◇ それからまた若干の距離を置いた場に、シェルビー・M・ペンウッドは居た。 彼は無能だ。しかし、そんな彼にも分かる事はある。 それは、ここが異常な空間である、という事。 ペンウッドは生まれついての家柄と地位だけで生きてきたも同然な男だ。いつも与えられた仕事だけをやって来た。 しかし、その仕事はレジ打ちではない。バーテンダーではない。マイクを持って壇上で「畜生」「畜生」と叫ぶ職業ではない。 彼の仕事は鉄火場、或いはそれに準ずるもの——実際戦地に赴かなかったとしても——だ。 だから分かる。故に気づいた。 今自分が居るこの場こそは、生と死が混じり合い、黒き災禍が渦巻く、死の臭いに満ち溢れる闘争の場である、と。 そう、殺し、殺され、滅ぼし、滅ぼされる——凶骸の宴なのだ。ここは。 あの女も……自分達をこの場に集めたあの女も、「デスゲーム」と、狂った殺し合いだと称していた。 ただの一人しか生き残る事を許さない、狂った殺し合いだと称していた。 なれば、なれば、臆病者の、無能なシェルビー・M・ペンウッドはどうするのか? 決まっている。決まりきっているとも。 あの場には、一切の抵抗を否定され、殺された非力な少女が居た。あの場には、年端も行かない子供達が集められていた。ペンウッドはそれを見ていた。見てしまった。 子供は幼く、どうしようもなく無力だ。あの場に集められた子供達だって本来なら家族と、友達と、恋人と笑いあっている筈だろう。 それを、そんな子供達を、あの場に集めて、あんな場所に閉じ込めて、恐怖を以て、殺人を以て、殺し合え、生き延びたければ、殺し合えと——そう言った。 あの女は、プレシアと呼ばれたあの女は、確かにそう言った。 シェルビー・M・ペンウッドは無能で、臆病者な、ちっぽけな男だ。自分ではコンソールひとつ動かせない、家柄で生きてきたも同然のちっぽけな男だ。 しかし、彼は——シェルビー・M・ペンウッドは男の中の男だった。 「た、確かにわたしは無能で、臆病者だ。でも、私は……卑怯者ではない。わ、私は……こんな殺し合いには乗らない。 そんな頼み事は、どんな理由だって……聞けないね!」 思い胸に、思い言葉に、シェルビー・M・ペンウッドは、断固とした決意を口にした。 それより数十秒、ペンウッドは立ち尽くしていた。 別に、すべきことが分からずに、何もしなかったわけではない。 「な、何も起きない……のか?」 起きるであろう何かを待っていただけだった。 そう、起きるであろう何か——即ち、首輪の爆発を待っていたのだ。 最初に集められた場で、あのプレシアは、「アリサ」と呼ばれた少女を爆殺した。 理由は明らか——「口答えをした」からだろう。 あの少女は、無惨に殺されたあの少女は、恐らく全く以て普通の少女であろう。 吸血鬼でも、王立騎士団でも、法皇庁でも、軍人でも、魔導師でもないただの少女であろう。 そんな、そんなただの——ただの無力な少女を、口答え……『言葉で刃向かった』という理由だけで惨殺した。 それなのだ。あの女……プレシアはそういう女なのだ。 憤った無力な少女を殺す、そんな女なのだ。 あの場で誰よりもしっかりと、誰よりもはっきりと、女へと立ち向かった少女を——勇気ある、無力な少女を見殺しにした。 突然のことで混乱したとか、締め付けられて臆病になったとか、そんな理由で見殺しにした。 それが、ペンウッドには何よりも許せなかった。 自分が、或いは自分が女に拒絶を告げれば良かった。 無能な、どうしようもなく臆病者の自分が代わりになってやれば良かった。代わりになれれば良かった。 では何故なれなかった? ——それは、臆病者だからだ。 「待て、やるならわたしをやれ」と、映画の中の英雄か、それでなくとも言ってやれば良かった。言い放てれば良かった。 しかし、だかしかしそれを口には出来なかった。 自分は無能で臆病者だが、卑怯者ではない。——それは嘘だ。 卑怯者だ。しようのないほどの御し難い卑怯者だ。 勇気ある少女を見殺し、路傍の石に変えたのは、紛れもなく自分シェルビー・M・ペンウッドだ。 代わってあげられれば良かった。今からでも代わりたかった。 叶わぬなら。今後、この場で人を裏切り、屠り、生き血を啜り生き残るくらいならば、自害したかった。 いや、するつもりだった。 どうせ死ぬのならば、自分の他二十四時間誰も死ぬことがないように、そうやって死にたかった。 だから、口にした。少女の、自分の、意志を、決意を。 だが、だが現実に、実際にはシェルビー・M・ペンウッドは死なず、こうして震えを抑えられずに生きながらえている。 刃向かえば、意を反せば殺すのではなかったのか? ——しかし、ペンウッドは生きている。 この事は重要な事だが、差して喜ばしい事ではない。 だが、多少の言動では……『この場に於いては』殺さない、という事なのだろうか。 いや、そもそもに……。 「こ、この場での、行動は……分かる、のか?」 あの女は、プレシアは、こちらを知覚しうる手段を以ているのか? あの女は魔法が使える。魔法使いだ。魔導師だ。ペンウッドだって魔導師は知っている。どころか、今は共に戦っている。 だから、彼らの『艦』でやっているように、遠く離れた場所を見られる事を知っている。 しかし、幾つだ? それは幾つになる? ここに集められた人間(言わば、“参加者”)の人数分、二十四時間、或いはそれ以上。そんなものを、ひとりで確認しきれるのか? 不可能だ。ならば、間違いなく『協力者』とやらは存在するだろう。 だが、何人だ? 何人こんな『いかれた殺し合い』に加担する? 加担はするが参加せず、この『いかれた殺し合いの観戦に止まる』? 百人か? 二百人か? そんなに居るわけがない。いる筈がない。 そうならば、監視の目は不自由。だから今、シェルビー・M・ペンウッドは爆殺されなかった。 或いは、「貴様のような無能で臆病者の男には何も出来んよ」と、そう言っているのだろうか? ならば、ならばその考えを崩してやろう。それが叶わぬとも、誰かの助けになろう。 それが、シェルビー・M・ペンウッドに託された、「アリサ」という少女からの、仕事なのだ。 そう決意し、立ち上がったペンウッドの耳に、叫び声と銃声が飛び込んで来るのだった。 【一日目 深夜】 【現在地 E‐2】 【シェルビー・M・ペンウッド@NANOSING】 【状態】健康 【装備】なし 【道具】支給品一式、ランダム支給品(未確認1〜3個) 【思考】 基本:自らの仕事を果たす 1.この悲鳴をどうするか 2.殺し合いに乗るつもりはない 【備考】 ※少なくとも第四話以降の参戦です ※プレシアは何らかの方法(魔法含む)で自分達、『参加者』の監視をしている。 しかし、それがあまり正確ではないと考察しました 世界はいつも『こんなはずじゃない事』ことばかりだ。 もし、その喉で叫びをあげていなければ、柊かがみは、そんな風な事を口にしているだろう。 悪夢のような場所にいる——『こんなはずじゃない事』。 人が目の前で殺された——『こんなはずじゃない事』。 人を撃ってしまった——『こんなはずじゃない事』。 こんな筈じゃなかった。撃つつもりなんてなかった。そう、声を大にして訴えたかった。 すまない。と、撃ってしまってすまないと、直ぐにでも謝罪と手当てをして上げたかった。 いや、して『上げたかった』などという傲慢ではない。直ぐにでも謝罪と手当てをさせて欲しかった。したかった。 しかし、思いに反して、かがみの体は動かない。 或いは——罪を認める事を、体が拒否しているのか。 罪……自分を気にかけた少年を“射殺した”事。 射殺した……そう、殺、した。命を……未来を奪ったのだ。 自分をこんな場所に一人置いてはいけない——そう言った少年。 優しいだろう。強いだろう。そんな少年の未来を、これからを奪った。 きっとまだまだ出会ってない人や、やりたいこと、友達……いっぱいあっただろう。 それら全てを、この手で奪ったのだ。柊かがみの、この手で。 「ごめんなさい」 気が付けば、口から謝罪の言葉が出ていた。 「ごめんなさい」 謝って、許されるなんて甘い考えは持ってない。 「ごめんなさい」 しかし、それでも言わずにはいられなかった。 「ごめんなさい」 謝らずにはいられなかった。 「ごめんなさい」 許して貰うつもりはなかった、 「ごめんなさい」 ただただ、謝る事しか出来なかった。 「ごめんなさい」 謝罪の言葉を口にしていく内に、 「ごめんなさい」 かがみはある考えに至った。 「ごめんなさい」 それは些か都合のいい考えかもしれない。 「ごめんなさい」 ただの逃げに他ならないかもしれない。 「ごめんなさい」 それでも、かがみにはもう耐えられなかった。 「ごめんなさい」 自分が今、生きている事に。 右手を持ち上げ、米噛と垂直にした。鈍く光るプラスティックの拳銃とは、平行。 指を引き込む。カチリと、トリガーセーフティが解除された。 「ごめんなさい」 「謝る必要なんか……ないッ!」 少年の体が、持ち上がった。引き金を弾く、一瞬前だった。 「僕は……大丈夫です! だから……」 血溜まりから体を起こすエリオの顔色は悪い。当然だ。致命傷にならずとも、至近距離で銃撃を受けたのだ。 それに死には遠い量だが、体からは相当量の出血をしているし、着弾によるショックで気絶していた頭は、こんなに早くの復帰には些か耐え難いだろう。 だがしかし、エリオの瞳に宿る力強き炎は、それを良しとしない。 「だから、あなたは……泣かないで、泣かないで下さい!」 「え……っ!」 手を伸ばし、目尻に触れる。 言われて、かがみは初めて気が付いた。自分の頬を伝わる涙に。 そうしている間に、エリオが一歩踏み出した。 「辛かったんですよね。苦しかったんですよね」 「来な……」 かがみの声が音を成すより先に、エリオの言葉が形を成す。 「あなたの苦しみ全部を、僕がわかることは出来ません。それでも、この場には僕がいて、あなたがいる。分け合う事は出来ます」 「え……」 「だから、分け合いましょう。その苦しみを、悲しみを」 既にエリオとかがみの距離は埋まった。 「僕の名前はエリオ、エリオ・モンディアル。そこから、始めましょう」 「ひ……う、ううっ……」 銃がかがみの手から滑り落ち、音を立てる。 ——許してくれるんだ。許されていいんだ。 かがみは、エリオの手を取り、泣いた。 ◇ ◆ ◇ 「その、エリオ……ありがと」 赤らめた目尻を拭いながら、頬を紅潮させるかがみ。その言葉は、緊張からの解放感からか、はたまたエリオへの安心からか。 「いえ、僕は……グッ」 「エリオッ!」 膝を付いたエリオの胸には暗赤——即ち、出血痕。 「大丈夫……ちょっと吃驚しただけです。もう、大した痛みは……ありません」 「でも……」 改めて、自分のやった事を恐ろしく思った。許されてはいけない、そうも感じる。 そんな様子を見越してか、エリオは優しくかがみの手を握った。 「この位、大丈夫です」 「でも……」 「きっと、大事な血管や臓器は無事です。ほら、もう血も殆ど止まってますから」 「そう……だけど」 そうは言っても、あの出血量だ。手放しではいられない。何か——せめて手当て位は、しないと。 「ちょっと、待ってて……あ」 振り向いた足が蹴りつけたもの——銃が地面を滑った。 忌まわしき、銃。エリオをこんな風にした、原因。自分が使った。 「あ……あ…………」 「——僕が持ちます!」 「え?」 「大丈夫、僕が持ちます」 落ち着ける為だけに言った訳ではない。この場に居るなら、どこかで、いつか、使わなければならなくなるものだ。 それはエリオだって重々承知している。 それでも、“持つ”——“使う”とは言えないのは覚悟が足りないが故か。 「え……あ、うん」 エリオを言葉を受け、一先ずデイパックへと向かう。と、もう一つ何かを落としていた事を思い出した。 案の定、デイパックのそばに墜ちている紫のそれをとりあえずスカートのポケットへと押し込め、デイパックを開く。 「えっと……」 漁ってみるも、かがみの望むような医療品は有りそうもない。 ——どこかに、病院があれば手当てして上げられるかな。 地図を広げようとして、かがみは気づいた。細かい事だが大事なことだ。まだ、名前を教えていなかった。 「そう言えば、私の名前をまだ言ってなかったわよね。私の名前は柊——」 “かがみ”……その言葉が、エリオに届く事はなかった。 「なッ……うわああああああ」 エリオ・モンディアルだった体の一部……その血溜まりから湧き現れた紫色の怪物は、目と鼻の先の人間——エリオ・モンディアルに襲いかかった。 怪物……それこそは鏡の世界『ミラーワールド』に生息するミラーモンスター。 ベノスネーカー——仮面ライダー王蛇の契約モンスター——はエリオの作った血溜まりの鏡面から出現、その眼前にいる、エリオを「餌」と認識、襲いかかった。 それがカードデッキの主、柊かがみの望むものでないのだが——最早、ベノスネーカーには関係ない。それ程までに、飢えていた。 突然の襲撃に、不意をつかれ為す術もないエリオは無惨にもミラーワールドに引き込まれ、そのまま咀嚼——文字通り無“残”な最後を遂げる。 急な事態に声も上げられず、茫然とする内に目の前で自分を許してくれた少年——エリオが飲まれていくのを見ていたかがみ。 何があったのか、何が起きたのか……それすら分からず、逃げるようにその場を飛び出した。 かがみに分かる事はただ一つ、 「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」 自分は、決して許されてはいない——いけないのだ、と。 【エリオ・モンディアル@デジモン・ザ・リリカルS&F 死亡】 【残り人数:59人】 【一日目 深夜】 【現在地 E‐2南部/路上】 【柊かがみ@なの☆すた】 【状態】健康、極度の精神不安定 【装備】王蛇のカードデッキ@仮面ライダーリリカル龍騎 【道具】なし 【思考】 1.ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい 【備考】 ※なの☆すた第一話からの参戦です。 ※柊かがみのデイパック(支給品一式、ランダム支給品0〜1)はE-2に放置されています ※柊かがみのランダム支給品、グロック19(15/15+1発)@リリカル・パニックはE-2に放置されています ※エリオ・モンディアルのデイパック(支給品一式、ランダム支給品1〜3)はE-2に放置されています Back 駆け抜ける不協和音 時系列順で読む Next 悪魔とテロリスト Back 駆け抜ける不協和音 投下順で読む Next 特別捜査、開始 GAME START シェルビー・M・ペンウッド Next 残る命、散った命(前編) GAME START 柊かがみ Next 残る命、散った命(前編) GAME START エリオ・モンディアル GAME OVER
https://w.atwiki.jp/a_nanoha/pages/177.html
法戦記リリカルなのはForceNEXT Design09 フッケバイン1の剣士・サイファー!シグナムとアギトを単独で打倒し、初めて『リアクト』の威力を明かした…… サイファー×ディバイダー944ケーニッヒ・リアクテッド ディバイダー944ケーニッヒ・リアクテッド リアクター「ケーニッヒ09」によってリアクトしたディバイダー944。 二振りの長大な片刃刀の形態を取り、強力な切断能力を誇る。 どちらの刀身からも分断(ディバイド)の発動が可能で、一般的な魔力防御のほぼすべてを無効化する。 刀身を利用したエネルギー射撃も可能だが、その威力や命中精度は本人曰く「いまひとつ」で、 もっぱら「近づいて斬るまでもない」と判断した相手にのみ使用される。 近接武器としての刀身強度も高く、サイファー自身の病化特性「対鋼破蝕」への耐性も備えている。 ディバイダー944ケーニッヒ・リアクテッド設定画 引っぱるとシリンダーが出ます 描く機会はなさそうですが… このブリッジで装甲を支えます